2008年02月09日

母ちゃんごめん。

母ちゃんごめん。
今更もう遅いか。
俺は取り返しのつかない事をしてしまった。
だんだんと近づいてくる。


この子は本当は根の優しい子なんです。
俺が問題を起こす度に言っていた母ちゃん。
何度も万引きするたびに何度も頭を下げた母ちゃん。


ガキの頃、働いていた弁当屋から割烹着と長靴姿で授業参観に駆けつけた時、俺は母ちゃんの事をみっともないと思った。
友達の母ちゃんは綺麗な服を着て綺麗な化粧をしているのに。
割烹着と長靴姿の母ちゃんを見て、俺は惨めに思っていた。


この子は本当は根の優しい子なんです。
そんな事はもう言わんでくれ母ちゃん。
俺はどうしようもない男だ。


中学を出て働くでもなく、いつしか悪い仲間とつるんでヤクザな道に足を踏み入れた。
何度も警察沙汰を起こしても母ちゃんだけは俺を庇ってくれた。


親父が居ない事に引け目を感じていた母ちゃん。
貧乏に引き目を感じていた母ちゃん。
学が無い事に引け目を感じていた母ちゃん。


お前が悪いんじゃないみんな母ちゃんが悪いんだからお前は悪くない。
もう、そんな事は言わんでくれ。


ああ、母ちゃん。
俺は取り返しのつかない事をしてしまった。
だんだんと近づいてくる。


今更だけど、今更だけど、俺は母ちゃんに言っておきたい事があったのにもう遅い。
もう遅い。
だんだんと近づいてきた。
俺は取り返しのつかない事をしてしまったよ母ちゃん。


死ぬ時に人は自分の人生を走馬灯の様に思い出す。
と云うけれど、俺は母ちゃんの事しか思い出さんよ。
母ちゃん。
言いたい事が一つだけあるんだ。

だんだんと近づいてきた地面に頭が当たり、ぐしゃりと云う音を俺は聞いた。




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