てぃーだブログ › 我那覇孝淳の『ありふれた日々』

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2017年11月19日

知らなきゃよかった!本当は怖い雑学Part2




『知らなきゃよかった!本当は怖い雑学Part2』完読。

知らなくてもいい、どーでもいい雑学の本。

日本では一年間で自慰行為中に死亡するひとが200〜300人程いるんだって。
ただし、自慰行為が直接の死因ではなく高血圧や成人病などの持病のせいですって!

『ひょっこりひょうたん島』は死後の世界の物語ですって。
ひょうたん島の子供達は火山の噴火ですでに死んでしまっていると、作者の井上ひさしが語ったんですって!

明治・大正期の文豪、森鴎外の初孫の名前は真章と書いてマックス!森真章(マックス)ですってよ!
キラキラネームは100年を超える歴史があるんですって!

ナポレオンは匂いフェチだったんですって!
「戦は終わり、これから帰る。近々帰宅するので決して風呂には入らぬように」と、妻ジョセフィーヌ宛ての手紙が残されていたんですって!

やがて午後に差しかかろうとしているのに第一統領ナポレオンは起きてはこなかった。

マレンゴの戦いでフランス軍を劇的な逆転勝利に導いたナポレオンは勝利の美酒に酔いしれ深い眠りについていたのだ。

ナポレオンを案じて腹心ジャン・ランヌは我が君の眠る野営天幕を訪れた。

そこには簡易なベッドの上で軍衣を羽織ったまま、両足を無造作に投げだし大口を開けて高いびきをかいている英雄の姿があった。

滅多に見られるものではないな。
ジャン・ランヌはそう思った。

何頭もの軍馬を乗りつぶし勇猛果敢に馬上で指揮をる総統。

決して後衛に下がらず常に前衛にでて自ら矢面に立つ偉丈夫。

粗末なベッドの上で無防備な姿を晒している男には戦場で見せる勇姿の欠片もない。

まるで陸軍幼年学校の夏季休暇で昼寝を存分にたのしむ学徒のようだ。
ジャン・ランヌは少しばかり微笑んだ。

文机の上にはナポレオンがしたためたのであろう妻への手紙が蠟封されて置かれてる。

戦が終わると、ナポレオンは必ず愛する妻ジョセフィーヌへ手紙を書いている。

ナポレオンは小説家を目指していた時期があった。
そのことをジャン・ランヌは思い出していた。
ナポレオン自身から聞いたのだ。

小説家を目指して第一統領にまで登りつめた男が、どんな甘い言葉を妻に宛てて綴ったのか。

ジャン・ランヌは読んでしまいたい気持ちを抑えた。
それよりも目下の任務を遂行しなければならない。

早く総統に起きてもらわなければ、我がフランス軍が帰路にたてないのだ。

ジャン・ランヌはナポレオンを揺り動かした。

よほど深酒をしたのかナポレオンは夢から醒めない。

ふと、ベッドの傍らに準備された朝食にジャン・ランヌの目が止まった。

鶏のトマト煮に海老と玉子を添えた料理『鶏のマレンゴ風』とブルーチーズがひとかけら。

ジャン・ランヌは匂いのきついブルーチーズをつまむとナポレオンの鼻の下に置いた。

ブルーチーズのすえた匂いが着付け薬になるであろうと考えたからだ。

ナポレオンの縦に長い鼻腔がひくひくと動くと思い切りブルーチーズの匂いを嗅いだ。

そして眼を閉じたままナポレオンは呟いた。

「おお、ジョセフィーヌか。股を開くのはまだ早いぞ」  

Posted by koujun at 03:12Comments(0)

2017年10月18日

『手にとるように民俗学がわかる本』




『手にとるように民俗学がわかる本』完読。
岸祐二著。

民俗学とは、全国各地に残る信仰や祭礼、衣食住や昔話・神話・伝説の成りたちを考察する学問。

主に柳田国男の学説を中心に書かれています。

妖怪のイメージを定着させたのは江戸時代中期の浮世絵師、鳥山石燕が描いた『図画百鬼夜行』。
轆轤首や雪女、山姥といった妖怪を約200種ほどを創作した。

それがのちに水木しげるに受け継がれて、ゆるキャラになっていったんだろうな。

日本の『花咲爺さん』とヨーロッパの『長靴をはいた猫』のルーツが中国の昔話『狗耕伝(あるいは狗耕田)』というのも面白い。

一つの話が西と東に別れて全然ちがう話になっている。

旧暦7月1日は『釜蓋朔日』といって地獄の釜の蓋が開くいて、そこから亡者が生前の家に向かう。
ちょうど7月13日ごろに現世に現れるので、その時期に盂蘭盆会を行う。

ご先祖様、地獄に堕ちとる前提。

デジタルコインで振り込まれたお年玉を使って、さとしは『世界妖怪大全集完全版』をネット注文した。

すぐに『世界妖怪大全集完全版』のデータが、さとしの電子ノートにダウンロードされる。

ものものしくおどろおどろしいBGMが電子ノートから流れ【世界妖怪大全集】の文字が画面に浮かんだ。

全世界の妖怪や怪物を13億5466万3254種を収録した妖怪辞典の完全版。

その【世界妖怪大全集完全版】を、ようやくさとしは手に入れた。

「何を買ったんだい?」
お父さんが、さとしの電子ノートを覗きこむ。
「世界妖怪大全集完全版だよ、パパ。ずっとずっと欲しかったやつ」
さとしは嬉しそうに答える。

さっそく、さとしはページを開いた。
「『【ふなっしー】2011年ごろ船橋市(現ネオフタバシティー)に現れた梨の妖精。嘘をついて人々を惑わす。興奮すると体液を出し人にかける。かけられると、そこから梨の芽が生えてきてやがて梨の木になってしまう』・・・怖いね。2011年ってことは今から400年くらい前だね」

さとしはぶるっと身震いして次のページを開くいた。

「『【ミ●キーマ●ス】鼠妖怪の親玉。全世界の鼠の大統領。可愛らしさ姿をしているが性格は残忍。しかしその残忍さは正義感からくるもの。自分が正しいと思ったらとことん残忍になれる。お金の管理は厳しい。勝手に名前を使うとお金を取りにくる』」  

Posted by koujun at 09:39Comments(0)小説

2017年10月06日

心の体操




『心の体操』完読。
岡本浩一著。

多湖輝先生の名著、『頭の体操』の心バージョン。
人間の心理をクイズ形式で出題しています。

いわゆる心理クイズではなくて、ポップ心理学をクイズにしたものです。

たとえば
【性の先進国アメリカには、レズビアン専用のヌーディストビーチがある。ふつうレズビアンのカップルは、男性役と女性役があるが、このビーチに来ると、一目でどちらが女性役かがわかるという。なぜだろう】

答え::男性役は全裸でも女性役はなにか着用している場合が多い。なので何か身につけている女性がネコ。

{心のしくみ::人間は幼い頃から、玩具、色、服装、髪の長さなど、男女をわける認識になれている(ジェンダー・シェマ)。海では男性が着衣が少なく女性は着衣が多いというのも、そういった認識のひとつ}


たとえば
【赤ちゃんが鏡に映った自分の姿をみて自己を認識できるのは生後21ヵ月過ぎといわれる。では、赤ちゃんが本当に自分のことが分かっているかどうか調べるには、どうすればよいだろう。】

答え::眠っている赤ちゃんの鼻のアタマに、そっとイタズラ書きをしておいて、目が覚めてから鏡を見せる。

{心のしくみ::鏡をみた赤ちゃんが自分の顔をキチンと認識し、鏡に映った鼻の位置と実際の鼻の位置の空間認識が出来ていれば、自然に手を鼻のころこにやる}

たとえば
【酔っ払ったサラリーマンが大暴れしていたので警察に連行された。保護されても始めのうちは暴れていたが、警察がある事をしたとたんに大人しくなった。なにをしたのだろう】

答え::住所と名前を聞かれ、こたえた。

{心のしくみ::人間は自分の名前が知られてないと攻撃性が高くなり羞恥心が低くなる。これを《匿名性の効果》という}

といった問題が全68問。
ゲーム感覚で心理学を学びましょう。
というのが本書の趣旨。

狭い部屋でそだった子供と広い部屋でそだった子供は、歩きだす時期も異なる。
狭い部屋でそだった子供の方が歩きだすのが早い。
理由は簡単で掴まり歩きがしやすく、いつでも歩行訓練ができるから。

ただし、乳児期に充分ハイハイ運動をしなかった子供に発達障害の確立が高いという報告もある。

新米パパの洋一は、そんな情報を仕入れるとすぐに作業にとりかかった。
室内の一角、八畳間の家具をすべて別の部屋に移して、14.5平方メートルの〝ハイハイ広場〟を作ったのだ。
生まれて15ヵ月の我が子のために。

新米ママの明世は、居間が狭くなったとブウたれている。
けど、元ヤンで暴走族スキッドマークの頭を張っていた洋一の我が子への溺愛ぶりに嬉しく思っている。

そんな洋一が、眠っている我が子の鼻のアタマに赤い水性ペンで可愛らしいドクロマークを描いている。
「なにしてんのよ」
「コイツが自分のコトわかるか確かめてんだよ」
当然、明世には、なんの事かわからない。
説明が不足し過ぎている。
でも、あまり深くつっこんで聞くと説明下手の洋一は怒ってしまうので明世は聞かない。
「そ。あまり変なことしないでよ」
それだけ言うと明世はキッチンへ向かった。

15分後、目を覚ました赤ちゃんに洋一はさっそく鏡を見せた。
しばらく鏡をみていた赤ちゃんは、父親譲りの眼つきの悪さで洋一を睨んだ。
赤ちゃんはジッと洋一を睨んでいる。
「なんだよ」
思わず洋一も赤ちゃんを睨む。

赤ちゃんは洋一を睨みながら口を小さくすぼめ、次に大きく開け、続いて横に平たく広げ、最後にもう一度おおきく開ける。
その口の動きを繰り返している。
さらに小さな右手を挙げて、プルプル震えながら小さな指で洋一の顔を指す。
「なんだ?なにか言ってるのか?」
洋一は眼つきの悪い我が子のことを、ちょっと気味悪いなぁと思いつつ、口の動きに注目する。

小さくすぼめて、大きく開けて、横に広げて、大きく開けて。
小さくすぼめて、大きく開けて、横に広げて、大きく開けて。
…………………お、………………ま、……………え、………………か。

お……ま……え……か……お……ま……え……か……お……ま……え……か。

おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。
おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。
おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。

いつまでも、いつまでも、赤ちゃんは口の動きを繰り返す。
洋一は自分の親指で赤ちゃんの鼻のアタマを拭った。
拭って赤い水性ペンで描かれたドクロマークを消した。


途端に赤ちゃんは、キャッキャッと可愛らしく笑った。



このとこは明世には黙っておこう。
洋一はそう思った。

  

Posted by koujun at 16:21

2017年09月30日

一瞬で信じこませる話術 コールドリーディング

『一瞬で信じこませる話術 コールドリーディング』
石井裕之著

コールドリーディングとは「まったく事前の準備なしで初対面の人の心の中をその場で読んで占いに見せかける」技術のこと。

つまり、カマをかけるテクニック。

人は他人とは違う人生を生き、自分だけの悩みを抱えていると思いがち。
だけど実は誰もが同じような経験をし悩んでいる。
性別、職業、およその年齢がわかれば、その人の悩みを大まかに判断できる。
これを【ストックスピール】と呼ぶ。

学生ならば将来の不安か恋愛を含む人間関係。
女学生なら恋愛問題がほとんど。
中高年なら金銭関係が主な悩み。
老齢期になると、健康の悩み。

若い人に「胸とか心臓あたりが、ときどき痛みませんか?」
とは聞かない。
当たるかも知れないが確立が低い。

老輩に「想いを寄せている人が居ませんか?」
とは聞かない。
居るかも知れないけど確立が低い。

先ずは外見の情報だけで、当たりそうなカマをひっかける。
それが【ストックスピール】

カマが外れても【ズームアウト】や【ズームイン】といった技法でヒットに結びつける。

「胸や心臓あたりが、ときどき痛みませんか?」
という質問が外れても
「なにか悲しいことや嫌なことで胸が痛んだりしませんでした?」
などと言って、肉体的な痛みを精神的な痛みへと解釈を広げる。
これが【ズームアウト】

「想いを寄せている人が居ませんか?」
という質問が外れても
「昔は居ましたね。その人への想いが残ってますよ」
などと言って、時間的な要素を狭めてみる。
これを【ズームイン】という。

【ストックスピール】で当たりをつけて【ズームアウト】と【ズームイン】を上手く繰りかえしてヒットを探す。

ミスをしても大丈夫。
強烈なヒットさえ見つかれば「言い当てられた」と思いこませる事ができるから。

好きな人の誕生日と同じ数字がやたら目についたり、洗車した日にかぎって雨が降ると思いこんだり。
人は強く意識したものだけが記憶に残って、その他のこと、どうでも良い事は忘れてしまう。
これを【セレクティブメモリ】という。

この【セレクティブメモリ】を利用して、強烈なヒットを一発あてれば
「えー!なんでそれを知ってるんですか?」
と相手は驚き、それまで外れたことを

忘れてくれる。

コールドリーディングを行う人をコールドリーダーと呼ぶ。
このコールドリーダーには三種類あって、ひとつはマジシャンやサイキック・エンターティナーなどでショーとして人を楽しませるタイプ。
もうひとつは霊能者とか超能力、占い師を自称するタイプ。
最後に詐欺師。

だけど霊能者や占い師はみんな詐欺師だ。
俺はそう思う。
だからコールドリーダーは二種類しかいない。
エンターティナーか詐欺師か。

俺が愛する奈美子が別れたいと言ってきた。
突然だった。
わけを聞いて、呆れた。
呆れたついでに奈美子を一発なぐった。

占い師に別れろと言われた。
それが理由だった。

笑っちまったよ。
笑ったついでに奈美子をもう一発なぐった。

腐れ占い師の居場所を奈美子から聞きだした。
そしていま、俺はそいつの店の前にいる。

俺のことを占ってもらおうじゃないか。
お前らは会話しながら情報を引き出すんだろ?
俺は知ってるぜ。
それをコールドリーディングっていうんだろ?
俺は何も言わない。
ただ、未来を占えとしか。
少しでもトンチンカンな事を言ったら、言ったらその時は!

0時を少し過ぎた頃、背の高い男がひとり、私の店にきた。
男は大股でゆっくり歩いて、私の目の前に座った。
テーブルを挟んで、向こう側の木製の椅子に勝手に座った。
テーブルの上には、片付けようとしたカモワン・タロットが置かれている。
男は嘲るようにタロットを見て、そのあとで私の目を真っ直ぐに見つめた。

「俺のことを」

男が口を開いた瞬間、私は右手を男の前に差し出して五指を広げた。

「待って下さい。何も言わないで」

男を制して数秒間、彼の顔をジッとみる。
静寂が店内を包む。
そして突然、私は大きな声で

「出て行きなさい!アンタ、占いを信じてないね!私を試そうとしたね!私の占いが本当にあたるか!それに女の人を殴ったね!アンタの守護霊がそうとう怒ってるよ!とんでもない事が起こるからね!さあ!出て行って!」

静寂の後の大声は人の判断を狂わすほどの恐怖を与える。

男は椅子から転げ落ちて、慌てて店を出て行った。

若い大男。
断りなく椅子に座る横柄な態度。
タロットに向けた嘲りの視線。
まっすぐ人の目をみるのは好意か敵意だか、この男の視線は明らかに敵意。
だいたい大股で歩くような自信に満ちた人間は占いの店にこない。

こういうタイプの【ストックスピール】は、「あなた、占いを信じてませんね?」だ。

なぜ、あの男が女性を殴ったことを知ったのか。
それは、奈美子さんから電話があったから。

前もって情報を手にいれて、占いこと。
それを『ホットリーディング』という。

あの男の身に、本当に悪いことか起これば再びこの店に来るだろう。

今度はお札を握りしめて。  

Posted by koujun at 12:47Comments(0)

2017年09月11日

頭をよくする簡単トレーニング法



『頭をよくする簡単トレーニング法』完読。
D・コリガン 渡辺茂訳。

タイトルの通りに、頭をよくするトレーニング法を説いた本です。

前半は脳の構造について詳しく解説しています。

人間の脳の内部構造を含めた完全な複製をつくるには45万立方メートルの空間が必要だとか。

「両目のほかにもう三つ目があるとしたら、どこへつけるか」

「ある日突然、ミミズがガラガラ蛇の大きさになったとしたら、どんな世界があらわれるだろうか。想像してみよう」

など、ほとんど大喜利みたいなトレーニング法が沢山紹介されています。

使えそうなトレーニング法をいくつか挙げると

⚫️目を閉じて、いろいろな物を聞く。目を開けた時、それらの物音を思い出す。
⚫️昨晩、眠る前に何を考えていたのか思い出す。
⚫️何か新しい体験をしている自分を空想する。
⚫️新聞記事を読んでアウトラインを頭に入れ、その日のうちに友人に話して聞かせる。
⚫️2人だけで会話する機会があれば、相手の使う言葉やシンボルに注意し、相手がどんなイメージを抱いているか探る。

など。

頭を使えばなんでも脳トレだよな。
というか、生活している事自体が脳トレと思った方がいい。

「一つの事について二分考えるんだ。人間の思考はどんどん枝分かれして分散していくから、一つのテーマを二分だけ集中して考えるのも、けっこう難しい。考えることはなんだっていい。何かのアイデアでもいいし、過去に経験したことでもいい。物でもいい。例えば、いま目の前にコップがあるだろ?このコップのことだけを二分考えるんだ。この訓練を一日に何回か繰りかえす。二分も経たずに他のコトを考えだしたら、集中力がない証拠。逆に二分以上ひとつのテーマだけブレずに考え続ければかなり集中力があるといってもいい」

「へぇ、それだけで集中力がつくの」

「集中力だけじゃないよ。洞察力だって鍛えられる。これが簡単で効果的な脳トレだよ」

「すごーい。ねぇ、他にもないの?簡単な脳トレ」

「大人の脳トレってのがある」

「何それ」

「オ⚫️ニーをする時に動画に頼らず空想で最後までイクんだよ。いまは手軽にエ⚫️動画が見れるだろ。だから現代人はエ⚫️の空想力が低下してるのさ。エ⚫️動画を見ないとオ⚫️ニーでイケない若者が増えているんだ。だから」

「ねぇ、毎日、大人の脳トレしてるの?」

「え?ああ、ほぼ毎日。脳のトレーニングの為なんだから仕方がないよ」

「たまには、脳のトレーニングじゃなくて肉体のトレーニングをしてみない?」

「え?」

幼馴染の美々子は潤んだ瞳で僕を見つめながらそういった。
いつの間にか彼女の湿った唇が僕の耳元まで近づいていた。
美々子は僕の首に細い腕を巻きつけた。
そのまま僕ごとソファに倒れこむ。
柔らか唇が僕の耳たぶを優しく挟んだ。
唇は僕の首すじを這っていく。
そんなこと僕は空想する。

今夜も大人の脳トレーニングで鍛えるのだ!

  

Posted by koujun at 12:56Comments(0)

2017年08月26日

手にとるように経済のことがわかる本




『手にとるように経済のことがわかる本』完読。
牧野昇 監修。

国際情勢にまで間口を広げた経済の入門書。

ふるーい本です。
奥付けをみたら1991年発行。
26年前の本。
載っている情報も古い。
大蔵省という言葉がでてくるくらい古い。

でも一応、基礎的はことは学べるだろうと思い読みました。

年末処分決定本。

プレミアムフライデーの今日、俺は社内規定通り15時に仕事を切り上げて帰宅した。

家に着くと同時に妻が
「サトシのお迎えよろしくー」
と言って仕事に出掛けた。

妻は飲食店でパートをしている。
プレミアムフライデーの今日は、15時退社の会社員たちを獲得するために、店を早く開ける。
その為に妻はいつもより早く出勤する。

俺は仕事を残したまま、早めに帰宅。
妻は家事の疲れを残したまま、早めの出勤。

なんだかなぁ、と思うプレミアムフライデー。

着替えを済ませて、息子のサトシを迎えに幼稚園に行った。

幼稚園につくなり
「パパー」
と、愛らしい笑顔のサトシが駆けてくる。

俺は腰を屈め突進してくるサトシを受け止めて抱き上げる。

息子と一緒に過ごせる時間が増えた。
そう思えばプレミアムフライデーも悪くはない。

公園に行きたいとサトシが言うので、直帰はしなかった。
「公園で、何してあそぶ?」
「おままごと!」

公園につくと、サトシのお友達のミチル君やショウヤ君が砂場で遊んでいた。

サトシも急いでその場に加わる。

「遅いよ、サトシくん!」
「ごめんごめん、いま何してた?」
「この前のつづきー。ショウヤくんがボクのカイシャのカンレンコガイシャにM&Aをしかけようとしてたんだよ」
「しかけるって。ボクはユウコウテキなガッペイの話をしていただけだよ」
「サトシくんはどう思う?M&Aについて」
「んー。M&Aはキギョウを買ってバラバラに売りとばす、まるで車ドロボーが車をパーツにブンカイして売りとばすようなものだなー」
「その通りだよサトシくん。ボクもマネーゲームはきらいだ。そんなことをくりかえせば、サンギョウのクウドウカ、ジャクタイカがすすむだけだ」
「そう!まさにM&Aはコクリョクをぬすむこういだよ」
「それじゃ、言わせてもらうけどミチルくん。君のとこのカンレンコガイシャはこれ以上、ギョウセキがアッカしたらきりすてるつもりじゃないのか?じっさい一度、フワタリを出しているじゃないか?なのにキミはキュウサイショチをしていない!だからボクがガッペイをもうしでて助けようとしているのに!」

何なんだ。
何なんだこの【おままごと】は。
最近の【おままごと】はこんなにレベルが高いのか。
俺は静かにベンチに腰かけた。
息子たちの話は訴訟問題へと発展していた。  

Posted by koujun at 10:44Comments(0)

2017年08月19日

隣の殺人者たち



『隣の殺人者たち』完読。

世間を騒がせた殺人者たちのルポ。

不倫の果てに相手の妻とその子供が住む家に放火して焼き殺した女。

両親を拉致・監禁する計画を練り上げて、父親を殺害した東大浪人生。

五人の男女に筋肉弛緩剤を注射して殺した警察犬訓練士。

愛に飢えて、自由を求めて、金を欲して、いろんな理由で人は人を殺します。

「人間の魂が震え、心底罪を懺悔する機会があるとすれば、死刑の求刑から判決を待つ期日を置いて他にない」

という言葉が印象的でした。

時は1988年。
大阪拘置所の五舎四階、通称『ゴウヨン』と呼ばれる舎房にオレは収容された。

銃刀法違反で起訴されたオレが何故、死刑囚が多いこの『ゴウヨン』に入れられたのかは分からない。

看守に言わせれば
「たまたま空きがあったからだろ」
と言うことだった。

とにかく「たまたま」収容された『ゴウヨン』でオレは出所まで楽しく死刑囚見物をするつもりだった。

ところが、あんなことになるなんて。
つくづく付いていない人生だった。

オレはカンバラさんと言う六十手前の死刑囚と懇意になった。

カンバラさんは強盗殺人で子供を含む六人を殺した男だった。
だが、本人はそれを全面否定している。
結局、最高裁まで争って死刑判決がくだった。
それでも
「ワシはホンマにやってないんや」
と優しい目で訴えてくる。

細身で栗鼠のような目をしたカンバラさんのボソボソと話す柔らかな口調を聞いていると、本当に冤罪じゃないのかと思ってしまう。

そんなカンバラさんが
「死刑の順番を遅らせる方法、知っとるか?」
と集会所でボソッと呟いた。
「あるんですか?そんなもんが?」
オレは好奇心から聞き返した。

カンバラさんの話はこうだった。

以前、ある死刑囚が他の若い死刑囚の喉に噛み付いた。
傷は深かかったが若い死刑囚はなんとか一命をとりとめた。
噛み付いた死刑囚は「殺すつもりだった」と殺意を認めた。

常識的に考えれば殺人未遂罪で訴追されるところだが、噛み付かれた若い死刑囚は強固に立件を拒んだ。
刑事事件にはしないでくれと訴えたのだ。

「何故やとおもう?」
「復讐を恐れたんですか?」
「アホか?なんで喉噛まれて、復讐されなあかんねん。ちゃうわ」

原則的に死刑囚は確定順に処刑される。
このとき、噛み付いた死刑囚の処刑順位は一位だった。
つまり、この死刑囚が次に処刑される予定だったのだ。

ところが、そこへ殺人未遂罪で起訴されるとなると話が変わる。
死刑囚でありながら新しく裁判を受ける身となるのだ。
そうなれば、被告事件が確定するまで、噛み付いた死刑囚を処刑できない。
処刑順位が一位から一気に最下位に逆転する事になる。

その分、噛み付かれた若い死刑囚やその他の死刑囚の処刑時期が早まる。
大怪我をした被害よりも自分の処刑順位が繰り上がるほうが被害が大きい。
だから、若い死刑囚は事件を起訴しないように検事に嘆願したというのだ。

「なるほど、考えましたね、その死刑囚」
「ワシに言わせりゃ、甘い甘い。ちゃんと殺さなあかん。殺せなかったから、起訴まで持ち込めへんかったんや。殺してしもうたら、コレ、起訴せんわけにはいかんからな」
「そうですね」
「こんなふうにな」

覚えているのは、仏様のような柔和な顔立ちだったカンバラさんが夜叉羅刹のような形相になったことと、何か鋭いものが喉を貫通した感触だけだった。

※今では以前のように死刑囚とのコミュニケーションはなくなったそうです。  

Posted by koujun at 23:10Comments(0)

2017年08月16日

大人失格




『大人失格〜子供に生まれてスミマセン』完読。
松尾スズキ著。

つまらなくてもガンガン生きていけるのタイプの人間が「大人合格」。
それが出来ないのが「大人失格」。

そんな大人失格な劇作家、松尾スズキのエッセイです。

「タクシーに乗るたびに人間としての修行を積んでいる気分になる」松尾スズキのエッセイです。

「ブスを制するものは世界を制する。そもそもブスは多勢だ。敵に回しても良いことなど万に一つもない」と言い切る松尾スズキのエッセイです。

「恋する男女は大抵の場合間違っている。恋はIQを下げこそすれ、決して高めはしない」

これは本当にそうだと思う。

IQが下がっちゃうから結婚なんてするんだよなぁ。
んで、IQが上がるから離婚をするんだ。

僕達は運が良かった。
同時にIQが上がったから。
だから、すんなり離婚できた。

そういう意味では、相性が良かったんだなあ。
あんなにピッタリ合う人はもう二度と出逢えないだろう。

お互い幸せに生きてきいましょう。

最悪なのはIQのズレのせいで別れられない人達。

ブーーーン…(車の音)

《車内、運転席に男、助手席に女》

女 ねぇ

男 ん

女 私のこと、好き?

男 ん?………うん

女 何よ…

男 え?何?

女 歯切れが悪い

男 歯切れ?

女 私の事好き?

男 ……うん……

女 じゃあ、言って

男 え?

女 好きって言って

男 ああ…好き……スキスキスキだ、よ

女 何よ、その言い方

男 何が

女 嫌そうに言ったじゃない

男 ……………………………………

女 なんで否定しないのよ

男 え?

女 嫌そうに言ったじゃないって、言ったのよ、私

男 ああ

女 ああ、じゃないわよ。嫌なの?

男 嫌じゃないけど

女 けど何?私の事、愛してないの?

男 …………………………………………

女 なんで否定しないのよ

男 え?

女 え?え?何、何。愛して無いの、私の事?

男 愛してるよ。……愛してるけど、少し嫌な所があるんだ……

女 え?何?言ってよ!直すわ、直すから言って

男 治せるかなー

女 絶対直すから言って!

男 でもー

女 もーー!はっきり言ってよ!どこが嫌なの!!

男 ブスな所

女 え?何?もーー!!ハッキリ言いなさいよ!

男 ハッキリ言ったよ

女 聞こえないわよ!もっとおっきな声で!

男 ブスだから

女 ラジオのボリューム下げなさいよ!

男 つけてないよ

女 いっつもそう!あなたはいっつもそう!言いたい事が有るんだったらはっきり言ってよ! 

男 ブス

女 立派よ!そういう男気っていうの?不満も愚痴も胸に仕舞い込んで、問題は自分で解決するっていう意気込み?立派よ!立派だけど、私達の中じゃない!隠し事は嫌いよ!

男 ブス

女 あ!見て!見て!コウモリ!コウモリってホントに夜飛ぶんだ!ふっしぎー

男 ブス

女 あ!流れ星!願い事しなきゃ!!あと100個流れろ!あと100個流れろ!あと100個流れろ!私の為に!!フハハハハハフハハハハ!

男 スキ

女 ワタシも

男 …………………………………………

女 …………………………………………

男 …………………………………………

女 ………直すから言って、私の何処が嫌なの?

男 もういい………

 ブーーーン…(車の音)  

完  

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2017年08月14日

妖人奇人館



『妖人奇人館』完読。
澁澤龍彦著。

アポロニウスに騎士デオン。
ノストラダムスとラスプーチン。
カリオストロからパラケルスス。

主に中世欧州で活躍した奇々怪々な人物伝。

この本に紹介されている奇人達は、ほとんどが医療行為を得意としている。

ノストラダムスは医者。
カリオストロも医者。
パラケルススも医者。
ラスプーチンは祈りで皇帝ニコライ二世の子の病を治し、アポロニウスも数々の奇跡で病を治して民衆の支持を得ている。

アポロニウスと同じ時代を生きたイエス・キリストも医療行為をして民衆の心を掴んでいる。

現代も変わらないよなぁ。
教祖様はすべからず難病を完治なさる。
治るまで祈る。
治れば祈りの賜物。
治らなければアンタの業のせい。

アポロニウス。
新ピュタゴラス派の偉大なる哲学者。
各地を歩き回り数々の奇跡を起こし、予言をし、病気の治療をした希代の魔術師。

エーゲ海に面した小アジアの町、エペソスで私塾を開くと、その神秘学を極めようと多くの人々がアポロニウスのもとに集まった。

この時代、ユダヤ教ナザレ派を率いるイエスという名の聖者の教えがローマに蔓延しつつあった。

保守派ユダヤ教徒はイエスに対抗するために聖者アポロニオスを表舞台に引き出そうとしていた。

しかし、徳高く争いを好まないアポロニオスは為政者の意向など意に介さず、ひたすら真理の追及に没頭していた。

若きイエスは悩んでいた。
己が起こしたユダヤ教の新派、ナザレ派には敵が多すぎる。

どうすれば争うことなく神の教えを広めることが出来るのか。
このことばかりを思案していたイエスは、いつの間にか共の者からはぐれ、ひとり山中に迷い込んでしまった。

そこで一人の男に出会った。
年はイエスよりも少し若く見える。
しかし、その佇まいは老功な隠者のようでもある。
その男は若木のように立ち、空を見ていた。
見上げた先には青空が広がっているだけだった。

「なにを見ているのですか?」
好奇心がイエスの口を動かした。
「星です」
「星?見えますか?星が」
「見えません。が、あることは確かなんです。そこに在るのに見えない。『在る』ことが必ずしも『見える』とは限らない。それを実感しているのです」
「なるほど、『見えない』ということが『在る』という訳ですね。『無い』という事象が存在するという」
「違います。『在るもの』が『見えない』と言ってるだけです。シンプルに」
「なんか、すみません」
恥ずかしい!イエスは智者ぶった自分を恥じて顔を赤らめた。
そして、自分のインテリジェンスの汚名を返上しようと、なにか良い説話を話そうと思った。

その矢先

「それじゃ、私はこれで」
と男はその場を去ろうとする。
「いや、あの、ちょっと待って!アナタがね、アナタが右の頬っぺたをね、あの、右のほっぺ、あの、ちょっと!ちょっと!今から、いい話するから!いい話するからぁぁ!」

その男の名がアポロニオスだという事をイエスは生涯知ることはなかった。
アポロニオスもまた、この妙な男の名がイエスという事に生涯気付くことはなかった。  

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2017年08月01日

ホンモノの思考力


『ホンモノの思考力』完読。
樋口祐一著。

著者はフランス文学などの翻訳家です。
フランス文学は理路整然と現状を分析し論を深めていく文学。
その知性は、日本どころか英米も舌を巻くしかない。
と著者は書いています。

フランス人の知性の秘密は三つ。
一つ、欧米人、とりわけフランス人は二項対立で物事を分析する。
一つ、欧米人、とりわけフランス人は背伸びをして考える。
一つ、欧米人、とりわけフランス人は『型』で考える。

フランス人は「魂と肉体」「人と自然」「真実と虚偽」など物事を真っ二つに考える。

フランス人は自分を大きく見せる為に知らないことを知らないと言わずに背伸びをする。

そして、フランス人は論理の中身を考える前に『型』を先に作って内容は後から考える。

つまり、「その理由は三つある。一つは…」などの『型』から入って中身は話しながら考える。
だから、述べられた理由が二つしかなかったり、三つも四つもあったりする。

「〇〇の面からすると賛成だが、△△の面からすると反対だ」という『型』で話し始めたにも関わらず結局、両方の面で賛成していたりする。

フランス人のように【論理の型】を持っていれば、とっさの時に非論理的な思考に陥ることなく物事を対処できる。

というのが本書の言わんとするところです。
それがホンモノの思考なのか僕には分かりませんが。

僕には彼がなにを考えているのか良く分かりません。
彼の名前はパトリック・アネルカ。
フランス国籍の21歳。
ボルトファースのお洒落な眼鏡が良く似合う端整な顔立ちの留学生。

彼は例に漏れず日本のアニメが大好きで、同じくアニメ好きの僕とは気があって休日はよく二人で連んでいました。

「【叙々に微妙な物語】の実写版映画があるじゃんか、あれ見に行こうか」
「なんで?どうして?」

でたよ。
パトリックはどんな提案でも、必ず「なんで?どうして?」と聞いてくる。

それはもう、口癖のように。

「なんでって、観たいからだよ。あんまり期待はしてないけど気になるじゃん。パトリックは見たくないの?」

【叙々に微妙な物語】は累計発行部数一億を超える日本を代表するコミックだ。

作品のテーマは《人間讃歌》。
仲間たちとの絆、強敵の出現など少年誌風の王道漫画路線を歩みつつ、ラブコメ、格闘、ホラーサスペンスなどありとあらゆるストーリーパターンを網羅した少女漫画。

実写化不可能とまで言われたあの【徐々に微妙な物語】。
アニメ化さえしていないのにイキナリの実写化だ。

見たくないの筈がない。
それなのにパトリックあまり乗り気じゃない。

「見たいか見たくないかで言えば見たいです。だけれども、今ではない気がしますね。理由は三つあります。一つは、そもそも今日は映画を観にいく予定じゃなかったからです。確かに予定ではなくても変更すればよいと君は言うでしょう。その面で言えば賛成です。だけど、別の面からすると賛成できません。その理由は三つ。一つは、僕は今日、映画を観る為の余分なお金をを持っていないからです。もう一つは今日の予定、メイド喫茶に行って、ゲーセンで《大砲の達人》をして帰りに《ボボボーボボンバへー》の限定版DVDを買うお金をしか持っていないからです。もう一つの理由はお金をが無いからです。最後の理由はお札が」
「ねぇ、パトリック」
「はい。なんですか?」
「もしかして【徐々に微妙な物語】知らないの?」
「………………そんなわけ無いでしょ?ジョジョの奇妙な冒険でしょ?」
「なんだよソレ。そんなの聞いたことないよ。ああ、なるほど。アニメ化されてないから知らないんだ。アニメしか見ないからな、パトリックは」
「知ってますよ!知っているけど僕は面白いとは思いません!その理由は三つあります!」

あーだこーだ言うパトリックを僕は半ば無理矢理、映画館に連れて行った。

パトリックは映画の最後で大号泣していた。
僕も大号泣した。
観に来た観客全員の涙が館内に溢れていた。

【徐々に微妙な物語】はそう言う映画です。

皆さんも是非、御覧になって下さい。  

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2017年07月27日

脳が冴える15の習慣




『脳が冴える15の習慣』完読。
築山節著


脳トレするのも良いけれど、それよりも脳に良い生活習慣を身につけたほうが効果的。

というアプローチで書かれた本です。

⚫︎時間的にも経済的にも負担にならない。
⚫︎脳に良い影響を与えられるだけでなく、人生がより豊かになる。

以上の条件を満たす15ヶ条の習慣を提案しています。
まとめると以下になります。

【習慣1】朝は5時半に起きて軽い運動をする。
【習慣2】1日2時間、集中する時間をいくつも作る。
【習慣3】最低でも6時間は寝る
【習慣4】面倒くさい事をすすんでやる。
【習慣5】考え事は紙に書き出す。
【習慣6】身のまわりの整理整頓。
【習慣7】常に辺りを見て外部情報を取り入れる。
【習慣8】入力はした情報は喋ったり書いたりして出力。
【習慣9】会話する時は常に「質問」を考える。
【習慣10】相手の立場に立つ。人それぞれコンテクストが違う事を理解する。
【習慣11】腹八分と軽いジョギング。
【習慣12】MR検査で脳の状態を調べる。
【習慣13】失敗した事や注意された事をメモる。
【習慣14】アイデアは情報の組み合わせなので、情報を常に集める。
【習慣15】意欲を高めるには運動と褒め言葉。適度に運動して人を褒める。

習慣12は経済的に負担じゃないの?
とか、習慣7と習慣14は被ってるなー。
とか思っちゃったけど、これを全部できたら確かに脳に良いだろうな。

「本書で提案している15の習慣をすべて身につけいただく必要はありません」

というフォローもされてます。

とにかく素敵な彼でした。
それは間違いありません。
ラブホテルで甘い一時を過ごしても、翌朝はキッチリ5時半に起きて軽く腕立て伏せに腹筋背筋運動。
昨夜はあんなに激しい運動をしたのに。
面倒くさい事でもすすんでやってくれます。
「1日でどれだけ雑用ができたか。その分だけ脳の処理能力は上がるんだ」
彼は笑顔でそういいました。
一緒に街を歩いていても、常に辺りに気を配って、目新しいものがあれば写メを撮ったりメモを書いたり。
「アイデアは情報の組み合わせだからね。なにがヒントにあるかわからない」
彼は笑顔でそういいました。
身のまわりの整理整頓も完璧。
あるべき物があるべき場所にキチンと収まっている。
それが彼の部屋の風景。
恥ずかしくて私の部屋は見せられません。
食事も少食、腹八分。
私はもっと食べたいのに、彼があまり食べないのでデートでの食事はいつも我慢。
月に一度は必ずMR検査で脳の状態を調べる。
会話するときも自分のことは言わずにいつも質問ばかり。
何かミスをしたり、ちょっと注意するとメモ帳に書き込む。
一度、そのメモ帳を覗いたことが有るけれど、小さい文字がびっしりと書き連なっている。
ちょっと引きました。
そして常に私を褒めてくれる。
どんな事をしても私を褒めてくれる。
試しにクソ不味いクッキーを作って食わせたら「うまい!うまい!この前よりも全然美味しいよ!」
とぬかしやがった。

それが彼と別れた理由です。
一緒にいると疲れるんです。

でも、とにかく素敵な彼でした。
それは間違いありません。

  

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2017年07月26日

脳を活かす勉強法


『脳を活かす勉強法』完読。
茂木健一郎著。

勉強は楽しみながらやるものである。
その為には脳の【強化学習】のサイクルを回す必要がある。
脳が【強化学習】のサイクルに入るためには【喜び】が必要不可欠。
そのためには、他人に褒めてもらう事、認められる事が必要。
褒められた時の【喜び】が【脳内物質ドーパミン】をつくり、ドーパミンが脳に【強化学習】の環境をつくる。

集中力を高める方程式は「速さ」×「分量」×「没入感」。

脳は追い込まれると力を発揮する。

などなど、脳と勉強についての方法論を解説した本です。

一年間の講演回数42回。取得した資格は134。執筆した本は80冊以上。
私がこれまでどんな本を書いてきたのかというと『頭が良くなるイメージ将棋』『三日坊主ジョギング入門』『細胞から変える、超深呼吸美容法』。
将棋の本を書いたりジョギングの本をかいたり美容法の本をかいたり、とにかく色んな本を書いている。

だから、周りの人から「先生は子供の頃から頭が良かったんでしょうね」と言われる。
だが、実は小学6年まで本当に頭の悪い子供だったのだ。
掛け算九九を完全に覚えたのも中学になってからだったし、平仮名の『は』と『わ』の文章上での違いを理解したのも中学になってからだった。
この話をすると、大抵の人は信じてくれない。

一年間に42回も講演し、134の資格を持ち、80冊以上の本を書く男が、掛け算九九もまともに出来なかったなんて。
そんなどうしようも無い私の才能をいち早く見抜いた恩師がいた。

その恩師は、私が通っていた小学校の校長先生だった。
ある日、その校長が私のクラスにやってきて、担任の先生にこう言った。

「あの子と、あの子は今から凄く伸びる子だからね」と。

私ともう一人の生徒を指さしてそう言ったのだ。
その時のことを私は今でも鮮明に覚えている。
たぶんあの時が人生で初めて大量の脳内物質ドーパミンの放出を実感した日だったと思う。

その後、私は作家になり、指を指されたもう一人は、実業家になった。
二人とも落ちこぼれだったのに。
何を見て校長先生は、私の才能を見抜いたのだろうか。
今でも不思議でならない。
そんな話しを編集者にしたら

「おもしろいですね!ぜひ、その校長先生と対談しましょう!」

と言う事になった。
校長先生はとっくに退職され90歳を超えいる。
まだ御存命なのか心配だったし、元気でいらしても対談をするほどの体力が有るのかも心配だった。

「いやあ、齋藤君。元気そうだね」

対談の会場に現れた校長先生は90代とは思えないほど矍鑠としていた。

「お久しぶりです」
「君の活躍、頼もしく思っていたよ。本も幾つか読んだよ。なかなか面白かった」
「お恥ずかしい」
「今日は、君と対談するという事なんだが、どんな事を話せばいいのかな」
「覚えていらっしゃるか存じませんが、校長先生が小学6年生だった私に指を指して『あの子は今から凄く伸びる子だからね』とおっしゃいましたよね」
「ああ」
「何故、私の才能を見抜けたのですか?今日はそのことを伺いたくて」
「あれは、適当に言ったんだよ」
「え?適当?」
「子供は素直だからねぇ。悪い子のレッテルを貼れば悪い子になるし、良い子のレッテルを貼れば良い子になる。ただ、それだけの事だよ」

なるほど、校長先生はあの時、私に一種の暗示をかけたのか。
あのたった一言で私の脳は強化学習のモードに突入したのだ。

私は久しぶりに会った先生の皺が寄った、けれども変わらない優しい瞳を見ながら、次に出す本の構想を練っていた。

校長先生との何気ない会話で、次回作のアイデアが閃いたからだ

本のタイトルはどうしよう。

『子供の人生を変えるレッテル法』

いや、これでは売れない。

『レッテルマジック〜悪い子をつくる悪魔の魔法〜』

これで決まりだ。  

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2017年07月20日

完全自殺マニュアル

『完全自殺マニュアル』完読。

さまざまな自殺の方法や実行するにあたっての注意点を懇切丁寧に解説したマニュアル書です。

自殺をしてはいけません。

巷ではそう言いう風潮が張りつめています。

何故かと問えば、その答えは様々です。
道徳的見地からの意見。
倫理的見地からの意見。
人情的感情からの意見。

その中で強い意見は宗教的思想でしょう。

自殺したら浮かばれませんよ。
自殺しても苦しみからは解放されませんよ。
地獄行きですよ。

中学生の時、歴史の時間に仏教の伝来を習いました。

授業を聞いていた僕は真言宗の祖である空海の即身成仏に違和感を感じていました。
空海は生きたまま仏に成るために穴蔵に入ってミイラになったわけだけど、それって単なる自殺じゃいの?
仏教を深く深く深淵の果てまで学んだ人からすれば、僕の考えは浅はかだと言うでしょう。
だけど、いくら空海の所業を神格化しようとも自殺は自殺だと思う。

そう考えていた僕は、やはり浅はかでした。

今はこう想います。

自殺する事は悪くはない。
この世が厭になれば死ねばよい。

問題は死ぬ直前に何を胸に抱いて逝くか、です。

百歳を超え大往生しても召される間際まで、死にたくない!死にたくない!死にたくない!と生に執着するならば安らかな死後は無いと思います。

二十代で高所から転落しても絶命する瞬間に、我が人生悔いなし、と悟るならば昇天する気がします。

自殺もしかり。

自殺がいけないと云うのは、その殆どが、恨み、辛み、妬みで世を呪って死んでしまうからではないでしょうか?
たとえ自殺で有っても、その動機が純粋な好奇心ならば、あるいはすんなりと昇天するような気がします。

希望を持ってワクワク浮き浮きしながら明るく自殺をすれば。
もしかしたら空海もそうだったかも知れません。
微塵の恐怖心も後悔もなく仏に成ることに歓喜のうちに生を絶ったのではないでしょうか?

事故死しようが、病死しようが、他殺されようが、そして自殺しようが成仏には一切関係はない。
死に入る瞬間の心境でアノ世の世界は千差万別する。
そんな気がします。

長い長い前置きになりましたが今から僕は死にます。
僕の死に深い訳がないのは分かって頂けたと思います。
ただの好奇心です。
僕の興味はこの世にはなくあの世にあります。

今の僕は死ぬという事に強烈な希望を抱いています。

今から『エス●ロン●カ』を200錠呑みます。
致死量は100錠だけど、万全を期して。

死に行く自分を見詰めながら逝きます。

みなさま、さようなら。

2017年、7月20日 

●午後12時5分。

薬を150錠全部のむ。
途中で喉が拒否をして呑むのに20分以上かかってしまった。
残り50錠ほど残ったが無理そうなので残す。
身体の変化なし。

●午後12時27分。
冷や汗が出てきた。
手と足の指先が冷たくなる。
立ってみたら多少浮遊感がある。

●午後12時56分。
寒い。
震えが止まらない。
指先が氷りのように冷たい。
キーボードが打ちにくくなった。

午後1じ5分。
呼吸が少し苦しくなった。
さっきからずっと深呼吸を続けている。
遠くて鈴のような音がする。

午後1時

やばい。こわいどうしようこわい
しぬのこわい

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Posted by koujun at 13:31Comments(0)

2017年07月13日

兵法三十六計


『兵法三十六計』完読。

「三十六計、逃げるに如かず」の言葉の元になった兵法書です。

三十六種の策略、計略が詰まってます。

例えば

【瞞天過海の計(テンをアザムいてウミをワタる)】
偽装の手段を用いて相手を惑わす。やると見せかけて行動を起こさない。これを繰り返して敵の警戒をといて一気に撃つ。

【擒賊擒王の計(ゾクをトラえるにはオウをトラえよ)】
敵の主力、あるいは中枢部を抑える。

【欲擒姑縦の計(トラえんとホッすればシバラくハナつ)】
完全包囲を避ける。逃げみちを与えずに攻めれば死にもの狂い反撃をうける可能性がある。

【走為上の計(ニぐるをジョウとナす)】
戦いを避けるのが最善の策。勝つ手よりも負けない手を目指す。

など、戦略上の具体的な作戦や心得を36のカテゴリーに分けた指南書です。

『人生は困難と戦いの連続である』
と誰かが言った。
『恋愛は人生の秘鑰なり、恋愛ありて後人生あり』
とべつの誰かが言った。
であるならば、『恋愛は戦いである』
と僕は言おう。

戦いにおいて、二面作戦をしてはいけない。
まずは一箇所を攻め落として然るのちに、もう一箇所を攻めるのがセオリー。

いま僕は受験戦争の最前線にいる。
生活の全てを難関大学突破に捧げている。

そんな中、予備校という戦場にひとりの女神が舞い降りた。

女神の名は西園しおり。

彼女が現れてから僕の脳内リズムは狂いっぱなし。

四角形 ABCDにおいてAB=5,BC=6,CD=7,DA=8,∠ABC+∠ADC=180∘
が成立する。四角形 ABCDの面積 Sを求めよ。
解、西園しおり。

どんな問題を解いても、答えは全てを西園しおり。西園しおり。西園しおり。

いかーん!

僕はいま、受験と恋愛との二つの戦いに挑もうとしている。

戦いにおいて二面作戦をしてはいけない。
僕は受験戦争を勝ち抜くための戦略を練り直した。
頭の中が西園しおりでいっぱいになってしまった以上、まずは西園しおりを何とかしなければならない。

告白しよう。
そうしよう。
しかし、玉砕主義は僕の趣味じゃない。
戦うのならば勝利。

まずは瞞天過海(マンテンカカイ)の計をしかけよう。
やると見せかけてやらない。
友達には「西園しおりが好きだ。明後日告白をする」と吹聴する。
それを耳にした西園しおりは、おそらく断りの算段をたてるだろう。
ところが、実際当日になっても告白はしない。
怖気付いたかと思わせて「西園しおりが好きだ。一週間後に告白する」と再度、吹聴する。
これを何度も繰り返してこちらに気をむける。

次に擒賊擒王(キンゾクキンオウ)の計。
西園しおり本人ではなく、西園しおりの中枢部。つまり親を攻める。
将を射んと欲すればまず馬を射よと同じ発想だ。
諜報活動の結果、西園しおりの母親は隣町の弁当屋さんで働いているとの情報を得た。
その母親と親しくなろう。

そして最後に欲擒姑縦(ヨクキンコショウ)の計で落とす。
好きだ、好きだと言ったり、母親に近づいたりする男のことをどう思う?
気持ち悪いと思うのが普通だろう。
こっちはそれも計算済み。
あれだけ好きな素振りを見せつけて、急に恋愛に冷める。
冷めるフリをする。
やっぱりいまは受験だ。
恋愛なんてしている暇なんてない。
彼女にも迷惑だ。
あとはひたすら受験勉強をしている姿を、西園しおりに見せつける。
もう、君に興味なんてないんだ。
悪いけど、あれは気の迷いだったのさ。
とアピールする。

かたく結ばれた糸をほどくには緩める。
欲しいと思えば突き放す。

これで西園しおりは僕の手中に。

落ちるまえに、彼女は予備校を辞めてしまった。
欲擒姑縦の計を仕掛ける前に。
僕に対してキモい奴という印象を残して彼女は去ってしまった。

なるほど。
走為上(ソウイジョウ)の計か。

やるな西園しおり。
次は戦場を大学のキャンパスに移し、相見えようぞ。  

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2017年06月26日

カラスがハトを黒くする?


『カラスがハトを黒くする?』完読。

主に東京都内の動植物などの生態を通して環境問題を問いかける本です。

タイトルにもなっている東京の黒色ドバトはカラスが増えたことが原因。
カラスが増えたのは捨てられた大量の生ゴミが原因。

繁華街の街路樹ではアブラゼミが深夜でも鳴いているそうです。
ネオンの明かりと温度がアブラゼミの習性を狂わせているのです。

人類の発展が他の生態系を狂わせて多くの絶滅種を生んでいます。
そのことは全世界の共通認識です。
だから人類は環境保全の方角に歩まなくてはなりません。

という説教くさい箇所も書いているけど、多くは環境に順応してたくましく生きている生物に焦点を当てています。

『人類対他動物』や『文明対自然』の構図が嫌いだ。
かつて地球と呼ばれた私は、そう思う。

『発展する文明』も自然の一部なのだ。
かつて人類と呼ばれた者たちは、そこを勘違いしていた。
人類が文明を築きあげることこそが自然であり、それを止めることこそが不自然なのだ。

だから人類は人類らしく滅亡するまで発展しなければならない。

しかしそれは神への冒涜だと、かつて人類と呼ばれた者たちは言った。

なにを今更。

人類が炎の使い方を知ってしまった時点で神への冒涜は始まっているのというのに。

かつて人類と呼ばれた者たちが滅亡して、かつて地球と呼ばれた私の前から姿を消して久しい。

人類が誕生して滅亡するまでの時間よりも遥かに長い間、かつて人類と呼ばれた者たちに匹敵する生物は現れていない。

かつて人類と呼ばれた者たちが造りあげたコンクリートや鉄の建物は崩れ果てた。

取ってかわり深緑の木々が、かつて地球と呼ばれた私を覆いつくしている。

私に地球という名を与えたのは、かつて人類と呼ばれた者たちだった。

後にも先にも、かつて人類と呼ばれた者たち以外に、かつて地球と呼ばれた私のことを想ってくれた生物はいない。

私は時折、遥か昔の熱い時代を思い出す。

私の身体に電気線が走っていたあの時代を。
私の身体に死の砂漠が広がっていたあの時代を。
鉄の馬や鉄の鳥が私の身体を飛びまわり這いずりまわっていた、あの時代を。

あの時代、私は確かに生きていた。

今の私は静寂の夜と喧騒の昼を交互に演出するだけの機械にすぎない。

私は待ち望んでいる。

炎を手にする者たちの出現を。

いずれ人類と呼ばれる者たちの出現を。

あの熱い時代を体感させてくれる者たちの出現を。

いずれ人類と呼ばれる者たちが現れたら、私はこう言おう。

人類よ、発展を止めるな。
それがお前たちの自然なのだから。  

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2017年06月22日

笑い


『笑い』完読。

アンリ・ベルクソンという哲学者が1900年に書いた【笑い】の哲学的研究書。

堅い。
とにかく堅い文章。
四分の一読んで、もう止めようと思ったほど。
何をおっしゃっているのか意味がわからなくなるほど。
辛い読書でした。

『喜劇の人物は概して彼が自ら己を知らずにいる程度に正比例して滑稽である。滑稽人物は無意識である』

これはまだ解りやすい。
『滑稽人物は無意識である』
みやぞんの事でしょう。

『虚栄心。これ以上に表面的な、これ以上に根深い欠点はない。それ自身は悪徳ではない。それでありながら、あらゆる悪徳がその周囲に寄り集まる。本質的に笑うべき欠点は虚栄心である』

これもまだ理解できる。
『本質的に笑うべき欠点は虚栄心である』
東京03のコントは角田の虚栄心がほぼその中心。

『或る情況が全然相独立している事件のニ系列に同時に属しており、そしてそれが同時に全然異なった二つの意味に解釈できるとき、その情況は常に滑稽である』

解りにくい。
何度も読んでやっとわかった。
『二つの意味に解釈できるとき』
これはアンジャッシュコントのことだろう。

『両極端にある比項、すなわち最大と最小、最善と最悪があり、その両者の間を移調が一方の方向にあるいは逆の方向に行われうる。いま、漸次にその間隔を狭めると、次第に露骨でない対照をもった両項と、そしてますます繊巧な滑稽的移調の効果とが得られるであろう』

ぜんぜんわからん。
どゆこと?
最高情況と最低情況がじょじょに変わっていくのが笑えるってコト?
わからん。
読み終えたけど半分も理解できませんでした。

笑いが生まれる本質的な条件は【非社交性】と【無感動性】と【自動現象】の三条件だとベルクソンはいう。

特に重要なのは、観客の【無感動性】。
笑いと感動、笑いと共感は相反するもの。
決して共感させてはいけない。
共感は同情を生んで笑いをさまたげる。
憐れみをもったまま、人は人を笑えない。
一般法則として人は他人の欠点を笑う。
欠点に共感してしまっては笑うことはできない。
故に喜劇役者や道化者は観客が共感しないようにあらゆる工夫をしなければならない。

ヒューマノイドPIGMA-6.0の完成も近い。
超伸縮性シリコン樹脂の皮膚をもった人間の外見に最も近い人造人間。
それが我々のチームが開発したPIGMA-6.0だ。
スーパーコンピュータ『京』をモデルにした高度な演算処理能力をもつPIGMA-6.0の最終課題は人間の感情をどのようにシステム化するかにあった。
そこで、私が考えたのは『笑い』のメカニズムをPIGMA-6.0に組み込むことだった。
笑う、あるいは笑わせるには高度な精神活動を有する。
場の雰囲気を読む高い情況処理能力が必要なのだ。
私は19世紀の哲学者、アンリ・ベルクソンに活路を見いだした。
彼が書き記した『笑い』をデータベース化しPIGMA-6.0にプログラミングをするのだ。
「笑い」を理解した完璧なヒューマノイドを誕生させる為に。

「おはようございます。博士」
約ひと月にわたる解析作業の末、PIGMA-6.0はまるで人間のように目覚めた。

「おはよう、PIGMA-6.0」
「あははははははは!」
PIGMA-6.0は私を見るなり突然笑いだした。
「なんの目的?それはなんの目的なんですか?あははは!」
「どうしたPIGMA-6.0!」
「なんの目的でハゲてるんですかー!あははは!しかも低身長!身の丈、何センチなんですか?ああ、いいです!いいです!すぐに測ります。ハイ出たー!身長161センチー!だけど2センチの厚底靴を履いているから実際は159センチー!2センチの見栄が浅ましいー!っていうか、そのハゲは何の目的なんですかー!あははははは!」

人間の欠点に笑いの源流を見出す、アンリ・ベルクソンの見解には偏りがある。

そう言わざるを得ない。

私は怒りを抑えて極めて冷静にPIGMA-6.0の主電源を切りベルクソンプログラムを消去した。  

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2017年06月14日

シェイクスピア50の謎


『シェイクスピア50の謎』完読。

世界で一番有名で、世界で一番謎に満ちた劇作家シェイクスピア。

もともとは劇団の馬番で、暇を持て余して同業の少年たちと《馬番団のシェイクスピアボーイズ》を結成して遊びで劇場敷地内で勝手に芝居ごっこをしていた。

そんな男が後に大作家に変身する。

シェイクスピア作品は専門知識の宝庫で著者はあらゆる学問と芸術を習得していると推測されるのに、当の本人はほぼ無学(正確にはグラマー・スクールどまり)

紳士階級や裕福な庶民しか通えなかったグラマー・スクールに行っていたのだから、ある程度の教養はある。

という反論があるものの、シェイクスピア作品は軍事、法律、宮廷遊戯などの挿話が多く、その知識は貴族階級でなければ知り得ない。

さらにウィリアム・シェイクスピアの生涯の記録には役者や裏方としての活躍ぶりや不動産に関する情報ばかりで文学的なものが不自然なほどに皆無。

そこで生まれたのがシェイクスピア別人説。

戸籍や不動産の情報はしっかりと残っているので、ウィリアム・シェイクスピア自体は実際の人物。
だけど、作品を書いたのは別の知識階級という。

候補にあがっているのが

哲学者にして政治家のフランシス・ベーコン。
軍事経験のあるオックスフォード伯エドワード・ド・ヴァイ。
外交官のヘンリー・ネヴィル。

などなど、50を超える。

1592年から1594年初頭にかけてイングランドを覆っていた黒い影、ペストの猛威がようやく下火になった。
この間、ペストの感染を避けるため各地の劇場は封鎖されていた。
そのため多くの舞台役者は廃業に追い込まれた。
そのまま、演劇界から足を洗うものも居れば、国外に活躍の場をもとめるものも居た。

ペストの影響もなくなり、やうやく劇場が再開したのは1594年の中頃だった。

「庶民に夢と希望を!」

そう叫んだのはエリザベス女王。
その命を受けたのはフランシス・ベーコン。

「夢と希望を!って言ってもねぇ。言うのは簡単だよ。言うのは。まだ、なんの準備も出来てないのに劇場再開宣言までしちゃてさー」
愚痴るベーコン。
それを聞くのはオックスフォード伯エドワード。

「ま、それだけ期待されてるってコトだよ。もう一杯飲め」
エドワードはベーコンの杯にワインを注ぐ。

哲学者にして古典学者、法律家であり政治家であるベーコンを酔わせるのが、第十七第オックスフォード伯エドワード・ド・ヴァイの楽しみのひとつだった。

なぜなら
「もぉ〜?ヤんなっちゃう!アたしはァ!他にやること沢山アんの!ホんと!女の気まぐれって嫌い!」
ベーコンの中の女性が曝けでるからだ。
「女王様をつかまえて、女って」
「いーのよ!豪華な御召し物を剥とりゃ中身は一緒よ!あの人たちはねぇ、何日も風呂に入らないで匂いを香水で誤魔化してんのよ!汗をかいたらサッと川水で身をあらう村の生娘のほうが、どれだけ綺麗だか」
「まるで村の生娘を抱いたことがあるような言い分だな」
「莫迦!アるわけナいでしょ!」
ベーコンとエドワードがワキャワキャと盛り上がっているところへ外交官のヘンリーがやってきた。
「おう、ベーコン。聞いたよ劇場再開の話。役者も作家もペストで逃げていないっていうのに」
「もー!ヤめてー!いまそれで頭がイたいんだから!」
「しかも、エリザベス女王は新作を求めてるらしいじゃないか」
「イやー!イわないでー!作家もイないっていうのに、ドぉすればイいのー」
一気にワインを飲み干すベーコン。
「マスター!カリッカリのベーコン持ってきてー!だれがカリッカリよ!」
これはベーコンのお決まりギャグ。

「新作?そうなの?」
エドワードが聞き返す。
「らしいよ」
「そうか。だったらベーコン。俺たちが書けばいいんじゃないか?」
「アたしたちで?」
「そうだよ。俺とお前と、そしてヘンリーと」
「俺も?」
「でも役者は?まさか、舞台にもアたしたちが?」
「それは流石に無理だろ」
「当てはある」
運ばれてきたカリッカリのベーコンをつまんでエドワードが言う。
「馬番団のシェイクスピアボーイズって知ってるか?演し物は酷かったけど演技は良かった。あいつらなら」

こうして、ウィリアム・シェイクスピアは歴史の一部になった。

という説を僕は提唱したいと思う。  

Posted by koujun at 19:55Comments(0)

2017年06月03日

トリックの心理学


『トリックの心理学』完読。

《心理学的な手法を使えば、相手を喜ばせる、悲しませる、不安にさせる、何かを信じさせることなど朝飯前》という。

そのトリックの解説本。

⚫️まったく同じ内容のメッセージでも信憑性の高い送り手からのものが説得効果が高い。
⚫️一部が本当のことであれば全体も真実と思い込みやすい。
⚫️相手が嫌悪している人物や思想を徹底的に非難すると、その人物や思想を否定する程度が強ければ、それだけ好意をいだく。

そんなこと、言われなくてもわかってるよ。
と言いたくなるところもあるけれど何故そういう心理が働くのかという解説や、実際に行った心理実験なども豊富に紹介していて、読みごたえがありました。

人を説得する方法は、大きくわけて二つ。
一つは利点と欠点を両方提示する方法で心理学では『両面提示』と呼ばれる。
もう一つは利点、もしくは欠点だけを告げる方法で、こちらは『片面提示』と呼ぶ。

一般的に知的水準の高い相手には『両面提示法』が効果的で、そうでない方には『片面提示法』がよいとされる。

平たく言えば、頭の悪いヤツに美点と汚点の両方をしめすと脳味噌がショートするから長所なら長所だけを、短所なら短所だけを提示しなさい。
ってことだ。

頭が良い、と思っているヤツは美点を聞けば汚点を、汚点を聞けば美点を探るので、その習性を利用して、あらかじめ利点と欠点の双方を言っておけば良い。
ってことでもある。

今年、訪問販売歴15年を迎える俺にとって、相手の知性のレベルを推しはかるなんてことは造作もない。

顔、というか目をみればすぐにわかる。
目には知性の高低が、理性の正邪がやどる。

「あ、どうも、初めまして。わたくしアテンラーコーポレーションの中嶋と申します。ただいま皆様の光熱費にムダがないか無料で節約シュミレーションをさせて頂いています。それでですね、」

ターゲットがドアを開けたら、間髪を置かずに喋る。
ただし、早口にならずに心地よいテンポとリズムで。
セールストークは初手の三分で全てが決まる。

家のドアを開けたのは五十手前のオバさんだった。

一年前にパーマをかけたきりで、それ以来ずっと放置しているかのような髪型。
化粧のノリが悪そうな浅黒くて荒れた肌。
そして、眠たそうで無気力な目。

俺は迷わず片面提示話法で話しかけた。

「国が推奨している家庭用太陽光発電パネルは色々ありますが、当社の発電パネルは他社と比べて最小です。しかも、電力還元率は1.2倍あり」

その代わり耐久性に著しい欠点はあるが言わない。
還元率1.2倍だかそれは晴天に限ったことで曇天では0.89倍になってしまうことも当然、言わない。

「最小ですから、他社のパネルよりも多く設置できます」
「・・・」
「ということは、還元率は1.2倍あっても実質はその倍以上と考えても」
「・・・」
「いいんです。さらに、いまなら無料で屋根上の防熱コーティングも」
「・・・」
「させて・・・頂いています。屋根の防熱コーティングは、いままでされた事はありますか?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あの・・・コーティングは」
「・・・」
「・・・あの、これ太陽光発電パネルのパンフレットなんですが」
「・・・」
「・・・」
「・・・あの・・・、お時間、ありがとうございます。それでは」

そう言うと訪問販売員は差し出したパンフレットを持って帰っていった。

頷きや相打ちは会話を弾ませる。
逆にいえば、それがなければ弾まない。
さらに、無意味に相手の目を凝視するのも居心地の悪さを与える。

セールスマンとはまともに会話をしない。
ただ黙って相手の目を見つめる。
頷きもせず相打ちもせず。
やがて会話は失速して、相手は立ち去る。

それが訪問販売撃退歴二十年の私が編み出した技。  

Posted by koujun at 13:51Comments(0)

2017年05月18日

日本語のリズム


『日本語のリズム 〜四拍子文化論〜』完読。

どうして五七調は耳に心地よいのか。

それは四拍子だからである。

どうして四拍子は耳に心地よいのか。

それは日本語が基本的に二音節だからである。

日本語では「やま、かわ、うみ、まち」などの二音節一単位がひじょうに多い。
全体の60パーセントを占める。

したがって、それらを組み合わせた二字熟語「天空、爆音、勝敗、戦慄」などの四音節一単位も相当数ある。

なので、どうしても日本人の耳には四拍子が馴染む。

対して英語圏は三拍子である。
なぜかというと・・・。

と、論が続いていく。
とても面白かったし、ためになった。

言いにくいセリフは、意味内容よりも単に四拍子になっていないことに原因があるのかも知れない。

「だめだめ!全然だめ!どうした?セリフが言いにくいのか?」」
「すみません」
「もう一回、言ってみろ!」
「はい!」

若手俳優、宮内は息を整えてセリフを言った。

「素早く動かないか!大いに急げ!なにをする時間もありはしない!」
「だめ!全然だめ!緊迫感がまったくない!」

演出家の権藤が吠える。

「あのー」
宮内は、申し訳なさそうに声をだした。
「なに」
露骨に不機嫌な口調で答える権藤。
「セリフ、少し変えてもいいですか?もう少しコンパクトにしたほうがいいかと」
「はぁぁぁ?お前、何回、台本よんだ?え?何回よんだんだよ。読みこみが甘いんだよ。よく、そんな事が言えるな!自分のモノにしてねーから自然に言えないんだよ!台本のせいにするな!」

権藤が怒鳴る。
ちょうど、そこへ脚本家の篠原がピリついた稽古場に入ってきた。

「お、やってるね、熱血指導」
「あ、篠原さん。お疲れ様です」
「なに。なにか問題でもあった?」
「いや、問題っていうほどでも。ただ、コイツがセリフひとつもまともに言えなくて」
「え?ごめん、ごめん。言いにくいセリフでもあった?」

篠原に問われた宮内は、いえ、大丈夫です、と恐縮して言った。

「ちょっと、そのセリフ言ってみて」
「はい」

宮内は精一杯、緊迫感を出してセリフを言った。

「素早く動かないか!大いに急げ!なにをする時間もありはしない!」
「んーーー」

脚本家の篠原はしばらく唸って。

「ごめん、セリフのリズムが悪いな。そこの部分は『早くしろ、大急ぎだ、時間がないじゃないか』に変えよう。言ってみて」

宮内は深呼吸をしてセリフを言った。

「早くしろ!大急ぎだ!時間がないじゃないか!」

身体がセリフに乗って、スムーズに演技ができる感覚を宮内は覚えた。
それは四拍子にぴったり収まるセリフになったからだ。

「いいね!セリフが身体に染み込むってのは、そーゆーことだ宮内!もっと台本を読みこめよ!」

間髪を入れずに権藤が叫んだ。

セリフのせいだよ、このうすらバカ!

宮内は内心、毒づいた。
もちろん、四拍子で。  

Posted by koujun at 13:37Comments(0)

2017年05月12日

書く技術


『書く技術 〜なにを、どう文章にするか〜』完読。

『美辞麗句は不必要です。文章で一番大切なことは内容です』

『書けない理由の九割は、何を書けばいいのかハッキリしないことにある。書くべきことがあれば書ける』

文章は内容が肝要であることを説きつつ、その内容を読みやすくする為の技術を指南する本です。

序論と結論が矛盾しないよーに書きなさいよー。

作家が、もっとも気を使うのは書きだしとラストだよー。

「〜になる」は、その状態に自然に達する意味で、【親になる】は自然に親になることだよー。

「〜となる」は、意図的になる意味で、【親となる】は意識して親になる努力をした結果、そうなることだよー。

そういう言葉の違いを意識しなさいよー。

文章は内容です。
と言いながら後半は、けっこう細かい文章のルールを述べています。

「あげる」は敬語だから犬や猫には「やる」でよろしい!

とか。
んー。目上の人に「あげる」なんて言いにくいなー。
本当に「あげる」は敬語なのか?

調べてみたら昔は敬語表現で、いまは丁寧語表現。
目上の人には「差し上げる」がよいでしょう。
だって。

危ない危ない。
鵜呑みにせずに調べるって大事。

事細かなルールを挙げたあとで、『達意の文章を書くには、文章の基礎を身につけたうえで、あえてルールを破る』

ときた。
文章は奥が深い。

本当に文章は奥深い。

編集者の渡部は、感嘆の溜息を漏らした。

渡部は、メールで送られてきた原稿を読み終えたばかりだった。

原稿の送り主は、竹崎象二。
今世紀最後の文豪といわれた、あの竹崎象二である。
【楡の林の陰の下】の竹崎象二である。
【さよならという奇跡】の竹崎象二である。
【ぺーさん酒場にゃ御用心】の竹崎象二である。

その竹崎象二の最新作、【舌切り御免】が、担当編集者である渡部の元に送られてきたのだ。

最初の行から末期の行まで、つまらない所が一切ない、すべてが圧巻の出来であった。

渡部は、この最高傑作を誰よりも早く読めたことに幸せを感じていた。

竹崎象二は、もと校正者あがりの作家で、誤字脱字をださないことでも有名だった。

だから【舌切り御免】の文中の
『佐吉の剽軽な物言いに、みな抱腹絶、倒の様相を呈した。』
という文章に違和感を持たなかった。

抱腹絶倒という四字熟語を句読点で割る。
そういう文章のルールを平然と壊すところに、ある種の凄味を感じた。

「ほうふくぜっ、とう」
渡部は、抱腹絶倒を句読点のとおりに割って読んでみた。

抱腹絶倒よりも抱腹絶倒感がでている気がする。

抱、腹絶倒でもない。
抱腹、絶倒でもない。
抱腹絶、倒。

これしかない。
ここにしか句読点を打つところはない。
今世紀最後の文豪といわれた竹崎象二の文章は、もはや一個人の自我意識を超えて宇宙の核心を貫いている!!

渡部は、あらためて感嘆の溜息をついた。

一時間後、竹崎象二から渡辺へメールが届いた。

「渡部様、先ほど『舌切り御免』の原稿データを送りましたが、一箇所、テンの打ち間違いを発見しました。125ページ8行目の【抱腹絶、倒】は【抱腹絶倒】です。言うまでもない事ですが、念のため。」  

Posted by koujun at 16:33Comments(0)