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2017年08月01日

ホンモノの思考力


『ホンモノの思考力』完読。
樋口祐一著。

著者はフランス文学などの翻訳家です。
フランス文学は理路整然と現状を分析し論を深めていく文学。
その知性は、日本どころか英米も舌を巻くしかない。
と著者は書いています。

フランス人の知性の秘密は三つ。
一つ、欧米人、とりわけフランス人は二項対立で物事を分析する。
一つ、欧米人、とりわけフランス人は背伸びをして考える。
一つ、欧米人、とりわけフランス人は『型』で考える。

フランス人は「魂と肉体」「人と自然」「真実と虚偽」など物事を真っ二つに考える。

フランス人は自分を大きく見せる為に知らないことを知らないと言わずに背伸びをする。

そして、フランス人は論理の中身を考える前に『型』を先に作って内容は後から考える。

つまり、「その理由は三つある。一つは…」などの『型』から入って中身は話しながら考える。
だから、述べられた理由が二つしかなかったり、三つも四つもあったりする。

「〇〇の面からすると賛成だが、△△の面からすると反対だ」という『型』で話し始めたにも関わらず結局、両方の面で賛成していたりする。

フランス人のように【論理の型】を持っていれば、とっさの時に非論理的な思考に陥ることなく物事を対処できる。

というのが本書の言わんとするところです。
それがホンモノの思考なのか僕には分かりませんが。

僕には彼がなにを考えているのか良く分かりません。
彼の名前はパトリック・アネルカ。
フランス国籍の21歳。
ボルトファースのお洒落な眼鏡が良く似合う端整な顔立ちの留学生。

彼は例に漏れず日本のアニメが大好きで、同じくアニメ好きの僕とは気があって休日はよく二人で連んでいました。

「【叙々に微妙な物語】の実写版映画があるじゃんか、あれ見に行こうか」
「なんで?どうして?」

でたよ。
パトリックはどんな提案でも、必ず「なんで?どうして?」と聞いてくる。

それはもう、口癖のように。

「なんでって、観たいからだよ。あんまり期待はしてないけど気になるじゃん。パトリックは見たくないの?」

【叙々に微妙な物語】は累計発行部数一億を超える日本を代表するコミックだ。

作品のテーマは《人間讃歌》。
仲間たちとの絆、強敵の出現など少年誌風の王道漫画路線を歩みつつ、ラブコメ、格闘、ホラーサスペンスなどありとあらゆるストーリーパターンを網羅した少女漫画。

実写化不可能とまで言われたあの【徐々に微妙な物語】。
アニメ化さえしていないのにイキナリの実写化だ。

見たくないの筈がない。
それなのにパトリックあまり乗り気じゃない。

「見たいか見たくないかで言えば見たいです。だけれども、今ではない気がしますね。理由は三つあります。一つは、そもそも今日は映画を観にいく予定じゃなかったからです。確かに予定ではなくても変更すればよいと君は言うでしょう。その面で言えば賛成です。だけど、別の面からすると賛成できません。その理由は三つ。一つは、僕は今日、映画を観る為の余分なお金をを持っていないからです。もう一つは今日の予定、メイド喫茶に行って、ゲーセンで《大砲の達人》をして帰りに《ボボボーボボンバへー》の限定版DVDを買うお金をしか持っていないからです。もう一つの理由はお金をが無いからです。最後の理由はお札が」
「ねぇ、パトリック」
「はい。なんですか?」
「もしかして【徐々に微妙な物語】知らないの?」
「………………そんなわけ無いでしょ?ジョジョの奇妙な冒険でしょ?」
「なんだよソレ。そんなの聞いたことないよ。ああ、なるほど。アニメ化されてないから知らないんだ。アニメしか見ないからな、パトリックは」
「知ってますよ!知っているけど僕は面白いとは思いません!その理由は三つあります!」

あーだこーだ言うパトリックを僕は半ば無理矢理、映画館に連れて行った。

パトリックは映画の最後で大号泣していた。
僕も大号泣した。
観に来た観客全員の涙が館内に溢れていた。

【徐々に微妙な物語】はそう言う映画です。

皆さんも是非、御覧になって下さい。



Posted by koujun at 11:20│Comments(0)
 
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