2017年04月22日

日蓮の本


『日蓮の本』完読。

日蓮の仏教思想は過激で独善的だ。
法華経以外の経典はすべて邪教のたぐいと言い放つ。

「念仏無間、禅天魔、真言亡国、律国賊」

【念仏宗】は法華経を放棄し無間地獄へおちる業因である。

【禅】は教外別伝と称し経典を持たず権力に取り入ろうとする天魔の法である。

【真言宗】の祈祷は天変地異による災害になに一つ験をなさず、まさに国亡の祈祷である。

【律宗】は貧者を救済するといいながら、その慈善事業のための資財集めは貧しい者の犠牲を強いている。

法華経の他に民衆を救う法はない。
法華経こそが釈迦の本懐の法である。

それ以外の教説は一切認めない。
認めないどころか徹底的に攻撃する。

苦手だなぁ、こういう人。
日蓮さんとはお友達になりたくない。

蓮長は思い悩んでいた。
ひとつの疑問が彼を悶々とさせていた。
「仏法は釈迦ひとりから出でたる教えであるのに、何故に多くの宗派が醜く優劣をあらそっているのだろう。天台宗が真の法であるのか。であれば真言宗は禅宗は律宗は浄土宗は偽の法であるのか。真言宗が真の法ならば天台宗、禅宗、律宗、浄土宗は偽の法なのか。禅宗が真の法ならば天台、真言、律、浄土はすべて邪教なのか。他にあるはずだ。釈迦の本懐の法が。唯一の真理を示す法が!」

ただ一つの真理の法。
蓮長は清澄寺のすべての経文を紐解き、その答えを探し求めた。
得た答えは清澄寺には真理の法はないということだけだった。

暦仁元年、蓮長は清澄寺を下り比叡山へ上る。
延暦寺で研鑽をつむこと数年。
蓮長はついに法華経と出会う。
法華経を読み進めるうちに蓮長は滂沱の涙を流していた。

これこそが!
この経文こそが!
この法華経こそが!
あまねく人々を救う唯一の法である!
法華経こそが釈迦の本懐の法である!

釈迦入滅より幾重にも枝別れた仏法はすべて法華経に収斂されるべきなのだ!

のちに日蓮と名を改め日蓮宗を世に生みだす蓮長。
しかし彼は知る由もなかった。
唯一絶対の法だと信じた法華経。
その教えを流布するために立宗した日蓮宗は彼の死後、わずか六年で分裂し様々な新興宗教を産み落とす母胎となった。

なんとも皮肉な話である。




Posted by koujun at 07:48│Comments(0)
 
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