
2017年05月18日
日本語のリズム

『日本語のリズム 〜四拍子文化論〜』完読。
どうして五七調は耳に心地よいのか。
それは四拍子だからである。
どうして四拍子は耳に心地よいのか。
それは日本語が基本的に二音節だからである。
日本語では「やま、かわ、うみ、まち」などの二音節一単位がひじょうに多い。
全体の60パーセントを占める。
したがって、それらを組み合わせた二字熟語「天空、爆音、勝敗、戦慄」などの四音節一単位も相当数ある。
なので、どうしても日本人の耳には四拍子が馴染む。
対して英語圏は三拍子である。
なぜかというと・・・。
と、論が続いていく。
とても面白かったし、ためになった。
言いにくいセリフは、意味内容よりも単に四拍子になっていないことに原因があるのかも知れない。
「だめだめ!全然だめ!どうした?セリフが言いにくいのか?」」
「すみません」
「もう一回、言ってみろ!」
「はい!」
若手俳優、宮内は息を整えてセリフを言った。
「素早く動かないか!大いに急げ!なにをする時間もありはしない!」
「だめ!全然だめ!緊迫感がまったくない!」
演出家の権藤が吠える。
「あのー」
宮内は、申し訳なさそうに声をだした。
「なに」
露骨に不機嫌な口調で答える権藤。
「セリフ、少し変えてもいいですか?もう少しコンパクトにしたほうがいいかと」
「はぁぁぁ?お前、何回、台本よんだ?え?何回よんだんだよ。読みこみが甘いんだよ。よく、そんな事が言えるな!自分のモノにしてねーから自然に言えないんだよ!台本のせいにするな!」
権藤が怒鳴る。
ちょうど、そこへ脚本家の篠原がピリついた稽古場に入ってきた。
「お、やってるね、熱血指導」
「あ、篠原さん。お疲れ様です」
「なに。なにか問題でもあった?」
「いや、問題っていうほどでも。ただ、コイツがセリフひとつもまともに言えなくて」
「え?ごめん、ごめん。言いにくいセリフでもあった?」
篠原に問われた宮内は、いえ、大丈夫です、と恐縮して言った。
「ちょっと、そのセリフ言ってみて」
「はい」
宮内は精一杯、緊迫感を出してセリフを言った。
「素早く動かないか!大いに急げ!なにをする時間もありはしない!」
「んーーー」
脚本家の篠原はしばらく唸って。
「ごめん、セリフのリズムが悪いな。そこの部分は『早くしろ、大急ぎだ、時間がないじゃないか』に変えよう。言ってみて」
宮内は深呼吸をしてセリフを言った。
「早くしろ!大急ぎだ!時間がないじゃないか!」
身体がセリフに乗って、スムーズに演技ができる感覚を宮内は覚えた。
それは四拍子にぴったり収まるセリフになったからだ。
「いいね!セリフが身体に染み込むってのは、そーゆーことだ宮内!もっと台本を読みこめよ!」
間髪を入れずに権藤が叫んだ。
セリフのせいだよ、このうすらバカ!
宮内は内心、毒づいた。
もちろん、四拍子で。
Posted by koujun at 13:37│Comments(0)