てぃーだブログ › 我那覇孝淳の『ありふれた日々』

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2016年10月24日

あの人の幕引き


『あの人の「幕引き」』完読。

歴史上の人物の人生最後のストーリー。

ニュートンは晩年、学者を辞めて突然、造幣局員に転職。
偽札造り撲滅に執念を燃やして悪のシンジケートのボスを逮捕。
死刑台に送った。

何があったニュートン!

フロイトは精神分析学を確立して、人間の心の深層にある本能、特に性衝動の抑圧がヒステリーやノイローゼの原因になる事を解明。
だけど1日20本以上も葉巻を吸う衝動を抑えきれず上顎ガンに。
最後は闘病生活に耐えきれずモルヒネ注射で安楽死。

どうしたフロイト!

そんな偉人達の晩年だけど、一番憧れたのはイギリスの政治家チャーチル。

人生の前半は陸軍報道官として前線で戦い、退役後は政治家として戦った人。

政界を引退した後は《英語諸国民の歴史》の執筆に取り組み、トランプ遊びをしたり絵を描いたり。
南フランスで美味しい料理を食べたり悠々自適な生活で幕を降ろした。

最後が良ければ全て良し。
最後が悲惨で悲惨過ぎて笑えたのは皇帝ネロ。

即位した初期には善政を行なっていたのに、後に実の母親と皇后を殺害。
ローマが大火災になった時にはキリスト教徒を犯人に仕立て上げ残虐な死刑。
そのせいで各地に反乱が起こる。
早目に対策を立てておけば良かったのにグズグズしている内に元老院から追放される。

ネロは家臣とともにローマ近郊にある館まで落ち延びるが追手に見つかるのは時間の問題。

そんな状況を察して家臣たちはネロに自殺を勧める。

嫌だ嫌だとゴネていたネロだが、しぶしぶ納得した。
「わかった。私も誇り高きローマ皇帝だ。最後まで無様な真似はしたくはない。私の墓となる穴を掘れ」
ネロは威厳に満ちた声で言った。
家臣たちは内心呆れつつも顔には出さない。
「皇帝陛下、そのような時間は」
「だったらヤダー!死ななーい!逃げるー」
「仰せの通りにしろ!」
側近ニオキスが兵に命じる。
ここでゴネだしたら立て直すのに骨を折る。
ネロの臍が曲がりきる前に制する事ができたのは長年、ネロに仕えたニオキスだからこそ出来た芸当である。
兵たちは急いてネロの墓穴を掘った。
元老院が差し向けた追手が迫りつつあるなか、館の裏庭に阿保な皇帝のために墓穴を掘る兵士たちも憐れである。
屈強な兵士たちが掘った立派な塚穴をみた皇帝ネロは一言
「深すぎる」
そう言った。
「余を地獄に近づける気か」
「浅くしろ!」
側近ニオキスは即座に命じる。
命じられた兵たちは急いで砂土を入れ直して底を浅くする。
「遺体を浄める為の水を」
「用意しております!」
「火葬用の薪を」
「用意しております!」
「墓穴が浅すぎる。これでは犬が掘り起こして」
「陛下!!・・・これ以上は時間が御座いません。本当に、ほんっっっとーに!このままでは追手に捕まって公開処刑ですよ!晒し首ですよ!いいんですね!」
「ヤダ」
「だったら」
「わかった。剣をかせ」
何故、こうなってしまったのだ。
皇帝ネロは自問した。
今となってはわからない。
ネロはニオキスから渡された剣の先端を喉に当てた。
「イテ、これ、痛いよ」
「痛いですよ。そりゃあ。本物ですから」
「ニオキス」
「なんですか」
もはやニオキスは敬語を忘れている。
「手本を見せてくれ、先に手本を見せてくれたやるよ。余はやるよ」
「陛下。私は陛下を信じています。手本を見せれば、本当に手本を見せれば」
ニオキスに迷いは無かった。
もとよりネロが自害を果たしたら後を追うつもりだったのだから。
ニオキスは剣を手にとり素早く切っ先を喉に突き刺す。
その寸前、ネロが叫ぶ。
「やめろ!ニオキス!そんなことで命を粗末にするな!」
ネロはニオキスの腕を掴んだ。
剣先が喉に食い込む事はなかった。
「陛下」
自然とニオキスは目頭を熱くした。
「止めたからな」
「はい?」
「余は止めたからな。だから今度はお前が止めよ。余の自害を止めよ!言え!そんなことで命を粗末にしてはいけませんと言え!」

駄目だ。
やっちまおう。
俺の手でやっちまおう。
そして、元老院に謝ろう。
ごめんなさいって言おう。

ニオキスはそう考え始めていた。










  

Posted by koujun at 10:04Comments(0)

2016年10月20日

『違い』がハッキリ!わかる本

『「違い」がハッキリ!わかる本』完読。

雑学の本。
「いいクリーニング店とそうでないクリーニング店」
「長距離馬と短距離馬」
「新しい卵と古い卵」
「日本人の泣き方と欧米人の泣き方」

などの「違い」に焦点を当てた雑学。

例えば
「腕のいいバーテンを見分けるには、とにかく彼の頭を見ることだ。出勤前にシャンプーしたぞ、というサラサラのヘアは不合格。ここはポマードをごってりとつけ、きちんと髪をなでつけている人がデキる!となる」

とか

「地毛とカツラの見分け方は、部分カツラを使っている人は、地毛が伸びてカツラとの差ができるので、しょっちゅう理髪店にかよう。異常に理髪店に行く人こそカツラ愛好者」

など編集者の偏見に満ちていて、あまり、と云うか殆ど役に立たない雑学。

「日本のカレーはイギリスがルーツ。インドは17世紀にイギリスの統治下だったんだ。その時、インドに住んでいたイギリス人達がカレーを本国イギリスに持ち込んでカレー粉が生まれたんだよ。それが明治時代の日本に入ってきた。だから日本のカレーはイギリスがルーツなんだ」

延々と続く三上俊徳の薀蓄に明智小百合は内心ウンザリしていた。
それを面に出さない自分の事を女優だなぁ、なんて思っている。
女は生まれながらの女優。
そんな事を演技派有名女優が言っていたような気がする。

「美味しく感じる水と、そうじゃない水の違いってわかる?」
「んー。天然水とか?」
「そうじゃなくて、同じ水質の水でも美味しく感じるか感じないか、その違い」

知らんわ!
と心の中で絶叫しつつ
「えー、知らなーい」
と媚びた声色を出す明智小百合は半ば本気で女優になろうかと思っている。

「例えばこの水」

三上俊徳がテーブルクロスの上に置かれたグラスを指差した。
間接照明に照らされて少しオレンジ色に染まった上質な白いテーブルクロスに置かれたグラスを見て、明智小百合は思い出した。
そういや、ここ、フランス料理店だったんだ。
そして目の前に座っている男は、婚活合コンパーティで知り合った無口な医者だ。
少なくとも知り合った時には無口だった。

「美味しい水っていうのはね、体温よりも20度から25度低い水なんだよ。ちょっと計ってみようか」

そう言うと三上俊徳はノーブランドのビジネスバックから体温計を取り出した。
取り出して、そのまま体温計の先端をグラスの中の水に刺した。

「え?あの」
「ああ、大丈夫、大丈夫。コレは体温以外でも使えるヤツだから」

そーゆーことじゃなくて!
唖然とする明智小百合を尻目に三上俊徳は体温を水から抜くとナプキンで体温計の先端を拭く。
そして、さも当然のようにこう言った。

「測って」
「へ?」
「体温。これね、体温計なんだよ。水温も測れる体温計。珍しいでしょ。この水の水温は11度だったから君の体温が31度から36度なら美味しい水だ。もし微熱だったら残念ながら不味い水、っていうことになる。良いか悪いか。その違いをハッキリさせる事って、大切だよね」

良いか悪いか、違いをハッキリさせる事って大切。
唯一、その言葉だけが明智小百合を得心させた。
良いか悪いか、違いをハッキリさせる事って大切。
うん。その通りだ。
目の前で特殊な体温計のユニークな機能を得意げに語っている医者の良し悪しをハッキリさせた小百合は、これから出てくるフランス料理に全集中力を注ぐ決意をした。


  

Posted by koujun at 00:00Comments(0)

2015年04月17日

カクシッコ


リコ   
パパー!パパー!

パパ   
どうしたリコちゃん!大きな声だして!

リコ   
私!私!大変な事しちゃった!(大泣き)

パパ   
落ち着いて!どうしたの?パパに話してごらん

リコ   
今日、学校で、アリサちゃんと、シンゴ君とカクシッコをやったの!(大泣き)

パパ   
カクシッコ?なんだい?カクシッコって

リコ   
鉛筆を三人で握って、カクシッコを呼んだら、本当に来ちゃったの!本当に来たんですか?って質問したら、『はい』って書かれた所に鉛筆が動いたの!(大泣き)

パパ   
ああ、コックリさんの事か?大丈夫、大丈夫。パパも子供と時にやったことあるけど、なんともなかったよ?心配しないで。それはきっとシンゴ君が鉛筆を動かしたんだよ。あの子は悪戯坊主だから

リコ   
コックリさんじゃないよ!!カクシッコだよ!ほんとに来ちゃったんだよー!それで私、カクシッコに『本当に来たんですか?本当に来たんだったら、その証拠に私の筆箱を隠してください』って言ったの!(号泣)

パパ   
それで、消えたの?

リコ   
ううん。消えなかった。だから今度は鞄を隠して下さいって言ったの!

パパ   
ふーん。で、消えたの?

リコ   
ううん。消えなかった。だから今度は私を隠して下さいって言ったの!

パパ   
大丈夫だよ、リコちゃんはちゃんとそこに居るよ

リコ   
それで、今度はパパを隠してって言ったの!

パパ   
おいおい(笑)

リコ   
いっぱい、いっぱい、色んな物を隠してっ言っちゃたよーー(号泣)

パパ   
大丈夫だって、心配しないで

リコ   
あああ!!(号泣)どうしよう、どうしよう、どうしよう!

パパ   
リコちゃん!落ち着いて

リコ   
さっき、目の前で、筆箱が消えたんだよ!

パパ   
え?

リコ   
びっくりして、どうしよう、どういようって思っていたら、今度は鞄が消えたの!どうしよう!次はわたしも

パパ   
大丈夫だって、アレ?リコちゃん…!リコちゃん!!

ママ   
どうしたの?大声だして

パパ   
ああ!!ママ!リコちゃんが!リコちゃんが

ママ   
リコがどうしたの?

パパ   僕の目の前で消え

ママ   
え?パパ?パパーーー!!!!

アナウンサー  
こんばんは。深夜のニュースの時間です。昨日、突然、沖縄県那覇市が消えてしまった事件ですが、未だに真相が解明されおらず、野田総理は緊急記者会見をひら(ノイズ音)  

Posted by koujun at 23:49Comments(0)

2015年04月07日

幽霊物件


女1  
引っ越そうかと思ってるの

女2  
え?どうしたの急に。何か有った?

女1  
何もないよ。今の部屋もう4年も住んでるから飽きたってのもあるし、最近給料が上がったからワンランク上の生活でも目指そうかな~と思って

女1  
それはそれは景気のイイことで

女2  
それでさ、今いろいろ物件みて回ってるのよ。でも、なかなかコレだ!って言うのが見つからなくてね~。物件情報ってクチコミが一番いいっていうから職場の同僚にもそれとなく聞いたのよ。そしたら変な話し聞いちゃって

女1  
変な話?

女2  
うん。幽霊物件っていうの?オバケが出る部屋の話

女1  
ふーん

女2  
ふーん、って。アンタはいいよ。霊感が有るからオバケなんて珍しく無いでしょうけど

女1  
そんな事ないよ。出来れば見たくないよ。で?その同僚からどんな話、聞いたの?

女2  
ああ!あのね、同僚の友達の話なんだけど、その人、月8万のオートロックで新築のアパートに引っ越したんだって。新築だよ新築。まさかオバケが出るなんて思わないじゃない?

女1  
出たんだ

女2  
そう!出たのよ!新築なのに!

女1  
まあ、幽霊には新築だろうが何だろうが関係ないけどね。で、どんな霊が出たの?

女2  
引っ越して5日目の夜にトイレの内側からノックの音がしたんだって!彼女、あ、その人、女の人なんだけど彼女は一人暮らしで、部屋の中には誰も居ないのにトイレの内側からトントントン、トントントンって聞こえるんだって…。きっと、トイレの小窓が空いていて、そこから風でも入って来てるんだろうって自分に言い聞かせてトイレのドアを開けたのね

女2  
うん

女1  
そのトイレ、ドアを開けるとその向こう側の壁に鏡が付いていてて

女2  
えー。じゃあ、ドアを開けて、その鏡に自分の顔が写って、ぎゃーってなったんじゃないの?

女1  
違うのよ!ドアを開けたら…その鏡には髪の長い女の人の後姿が写っていたんだって!目の前には誰も居ないのに、鏡には女性の後姿が!そして、ゆっくりとコッチを向いてニタァっと笑ったんだって‼︎うううう!言ってって鳥肌がたっちゃた!だからさ!そんな事が無いようにアンタにお願いがあるの!

女2  
なによ

女1  
一緒に物件巡りしない?いいなぁ~って思う物件が3っつ有るんだけど、一緒に行って幽霊がいないか見て欲しいのよ!

女2  
そんな事しなくてもアンタは大丈夫だよ

女1  
なんでそんな事言えるのよ!

女2  
んーーー。言いにくいんだけど、アンタが今住んでる部屋、幽霊だらけだよ。あんなに囲まれて感じないんだったら、どこ行っても大丈夫!  

Posted by koujun at 13:13Comments(0)

2015年03月18日

策略愛

男1  ここだよ、ここ。マジで良く当たるんだから

男2  いいよ~

男1  よくねぇーよ!何時までもウジウジ悩んでるお前が悪いんだから!お前らしくないよ!占ってもらってスッキリしろよ!ここの占い師、マジでヤバイから。本当に良く当たるって言ってたよ!

男2  だれが

男1  俺の姉貴の彼氏の妹の兄貴の彼女が!

男2  誰だよ!

占い師 どうも、いらっしゃいませ~。魅惑の館へようこそ~。んふ~。占いに来たの?

男2  は、はい

占い師  んふ~。いい男

男2  はい?

占い師  コッチに座って

男2  え?

占い師  コッチに座って

男2  こっちって、ソコ、膝の上ですよ?

占い師  あら?チンコの上がいいの?

男2  嫌ですよ!

占い師  んふふ~。冗談よ。初心者は先ず、膝の上から

男2  なんですか、初心者って

占い師  んふふ~。冗談よ~。さ、いいから座んなさい

男2  いや…。でも…

男1  いいから先生の言うとおりにしろよ!

男2  ああ…。じゃあ、失礼して

占い師  いらっしゃ~い。んふふ。見た目によらず結構重いのね

男1  あの、僕は何処に座れば?

占い師  察しなさい

男1  え?

占い師  空気を読みなさい。この甘~い空気を

男1  ああ…。はい、じゃあ、外で待ってます

男2  お、おい!ちょっと!

占い師  待ちなさい!膝の上から降りちゃ駄目!

男2  いや、でも

占い師  体重は79.8キログラム。身長、177.9メートルね。AB型がちょっと自慢の7月27日生まれの獅子座

男2  ええ!なんで解かるんですか!

占い師  あなたココに何しに来たのよ~!占いに来んでしょ!私の膝の上に座ればそれくらいモーニング・コーヒーよ~!

男2  何ですか?モーニング・コーヒーって?

占い師  ほら、私って朝飯の前にコーヒー飲むじゃない?

男2  知りませんよ

占い師  ん~。あなた、けっこう仕切りやさんで、直ぐに怒っちゃうタイプ。いつも自信たっぷりに振る舞ってるけど実は臆病な人ね

男2  そう、ですね…あってます

占い師  んふふ~。チンコの上に乗ってみる?もっと深く当てるわよ!二重の意味で

男2  結構です!

占い師  冗談よ~。んふふ。恋の悩みね。好きな人が居るけど、告白するかどうか悩んでるんでしょ?

男2  はい…どうすればいいですか?

占い師  だったら、その彼女、あなたのチンコの上に乗っけちゃえばいいのよ~

男2  だから、どうやればチンコの上に乗っけられるか聞きたいんですよ!

占い師  そんなの簡単よ~。だって貴方、これから私のチンコの上に乗るんだから~。チンコの上に乗っけるって簡単なのよ~

男2  なに言ってるんですか!乗りませんよ!

占い師  電気けしま~~す

男2  ちょっと!

占い師  怖くないから、怖くないから

男2  やめて~~~

占い師  全ては仕組まれた事なのよ!

男2  え?!あのやろ~~~!!やめて~~~~!  

Posted by koujun at 01:16Comments(0)

2015年03月07日

喪主は誰?


男  大丈夫か?

女  うん

男  気をしっかり持てよ

女  うん。大丈夫。ずっと前から覚悟はしてたから。正直、良かったって思ってるんだ。おかしいよね。お母さんが亡くなったのに、そう思うなんて

男  いや。気持ちは分かるよ。長かったからね

女  うん。ずっとずっとお母さん苦しんでたから。最後は言葉も喋れなかったけど、早く楽にして欲しかったんだと思う。今は悲しいとか、全然実感が無いけど、後からこみ上げてくるのかなぁ

男  うん。その時に思い切り泣けばいいよ

女  それよりも、ちょっと困った事があって

男  何?

女  喪主なんだけど

男  喪主?お前がやるんだろ?一人娘なんだから

女  それがね。お父さんがやるって言い出して

男  お父さん?たしかずっと前に離婚したんじゃあ

女  うん。そうなんだけど、連絡したら是非、俺にやらせてくれって

男  そうか。させてあげればいいじゃないか。お前が嫌なら話は別だけど

女  嫌じゃないよ。夫婦だったんだから。私もお父さんの事嫌いじゃなかったからさせて上げたいし。そもそも離婚の原因はお母さんの浮気だったんだから、そんな事を申し出てくれるなんて思ってもいなかった。…でもね、パパの方が夫婦生活長かったから、お父さんが喪主をやるなら、パパにさせろっていうのよ。でも親父の方がお金を持ってるから親父にお願いした方がいいのかなって思うの。でもそんな事を父に知られたら絶対に父が喪主をやるって言い出すに違いないのね。私、父の事好きじゃなかったから、父にはお母さんが亡くなった事を知らせてないのよ。私としてはお父さんより親父に喪主をして貰った方がいいんだけど、でもやっぱりパパに任せたほうがいいのか

男  ちょっと

女  なに?

男  言ってる意味が分かんないんだけど。大丈夫?混乱してる?お父さんの事、好きだって言って置きながら嫌いだっていったり。ちょっと休んだ方がいいよ

女  ああ、好きなのはお父さんで、嫌いなのが父の方よ

男  どういう事?

女  言ってなかったっけ?

男  何を?

女  お母さん四回結婚してるの、一番最初の人がお父さんで、私の本当のお父さん。二番目が父で三番目が親父、最後の人がパパ。どうしようか?もう面倒臭いから四人に弔辞読んで貰おうかなー  

Posted by koujun at 06:02Comments(0)

2011年12月20日

止める男

女  2011年も終わった。去年は本当に災害の多い年だった。なんて言うけど、毎年毎年、何かしらの災害は起っていると思う。地震も津波も台風も、人間から見たら災害だろうけど、地球目線でみたら、単なる自然現象に過ぎないと思うのよ。私、思うんだけど、本当は、地球って人間の事を嫌ってるんじゃないかな。だから、あの手この手を使って人間を排除しようとする。私たちが薬を飲んでウイルスを撃退するように。まぁ、兎に角、2011年は歴史的に色々ショッキングな年だった。私個人の去年起きたショッキングな出来事は突然、彼に振られた事。だからと言う訳じゃないけど、2012年。私は今、富士山の山頂近くの休憩所にいる。午前3時頃、ここを出れば、ちょうどいいタイミングで初日の出を参拝出来る。だけど、外は生憎の雨模様。山頂に着く頃には晴れてくれたらいいけど。この休憩所には、私を含め16人の登山者がいる。その中に、一人だけ完全に浮いているオジサンがいる。いや、オジイサンか。皆、登山靴に防寒具、ザックを持ってそれなりの装備なのに、このジイサンだけ、あれ、なんて言うんだっけ、修行する人。そうそう、修験者の格好なのだ。白と黒のツートンカラーの衣装に足元は足袋。そして、杖を持っている。おいおい、寒くないのか?そのジイサンが突然私に話かけてきた

修験者 お嬢さん

女  は、はい

修験者 気になるかい

女  は?

修験者 私の事、気になるかい?

女  い、いえ。別に

修験者 気になってるね!気になっている気を発しておる!そおです。私が修験道者です。初めて?

女  はい?

修験者 修験道者見るの初めて?

女  ええ、まぁ

修験道 女人禁制の身だからね!!!握手は出来ないよ!私はねぇ、お嬢さん。気になっている様だから言うけどねぇ、

女  別に気になっていませんけど

修験道 止めに来んだよ!

女   …

修験道 止めに来んだよ!

女   …

修験道 止めに来んだよ!

女   …

修験道 止めに来んだよぉぉぉぉ!

女   …あの…何をですか?…

修験者 気に成ってるね!お嬢さん!

女   成ってませんけど

修験者 2012年12月21日に世界は滅亡するんだよ!お嬢さん!知らないの!?

女   ああ、あのマヤの予言ですか

修験者 そう!それを止めに来んだよ!1999年のノストラダムスの予言も私が止めたんだよ!富士山の初日の出を拝みながら、私の力で、加持祈祷の御力で!

女   ああ、そうですか。じゃあ、外の雨を止めてください

修験者 いいよ!晴れたらイイんじゃなーいの!ポン!はい、晴れた~

女   嘘付け!

修験者 ああ!もう午前3時になるね!もう出発しないといけないね!お嬢さん!その荷物は私が持ってあげよう!私には強靭な精神力と肉体があるからね!

女   ああ、いいです!

修験者 いいって、いいって!私は70越えてるけどね、厳しい修行のおかげでいででででででででで!腰が!腰が!重っ!この荷物重っ!

女   大丈夫ですか?

修験者 いいって、いいって!私の事はいいから、早く行きなさい。

女   ………結局、私達はこのジイサンを置いて休憩所を出た。外はすっかり雨が止み、満天の星空に成っていた。そんな事は無いと思うけど、もし2012年12月21日に地球が滅びたら、重い荷物を持ってきた私のせいかも知れない。
  

Posted by koujun at 11:35Comments(0)コント

2011年09月27日

ふるさと



12年ぶりに故郷に帰ってきた。
村を取り囲む山々も、小川のせせらぎも、何も変らない。
昔のままだった。
田んぼの稲もすくすくと育っている。もうすぐ収穫の季節だ。なつかしいな。
やあ!大宮のおじさん!覚えていますか?僕です。
トラクターの整備をなさっているんですか?そういえば昔、おじさんのトラクターを勝手に運転して、木にぶつけちゃいましたね。
あの時は本当にごめんなさい。おじさんのげんこつ、いまでも覚えています。僕はこの村に帰ってきました。大宮のおじさん、さようなら。
   


この村には嫌な思い出しかない。



こんにちは、松屋のおばあちゃん!覚えていますか?僕です。
もう駄菓子屋さんはやっていないんですか?
そうですか。残念です。
そういえば、僕はよくおばあちゃんのお店で万引きをして、木製の定規で叩かれたっけ。
あれは本当に痛かった。あの時は本当にごめんなさい。
でも、一度だけ、何も盗んでいないのに、疑われて叩かれた事があったんですよ、知っていますか?
僕はこの村に帰ってきました。松屋のおばあちゃん、さようなら。

   

この村には嫌な思い出しかない。



こんにちは、御堂條(みどうすじ)先生!覚えていますか?僕です。
学校にいかなくてもいいんですか?
そうですか。定年ですか。長い間お疲れ様でした。
そういえば、僕が飼育小屋の鶏を全部売りさばいた時、先生は理由も聞かずに何どもひっぱたきましたよね。
あの時は本当にごめんなさい。
貧乏人は耐えるしかなかったんですよね。
僕はこの村に帰ってきました。
御堂條先生、さようなら。



この村には嫌な思い出しかない。



こんにちは、ハナちゃんのお父さん。
覚えていますか?僕です。
ハナちゃんは元気ですか?え?村を出て行ったんですか。
そうですよね。この村には働く場所がない。若者はみんな村を出ていく。
でも、僕は帰ってきましたよ。
そういえば昔、僕とハナちゃんが付き合い始めた頃、あなたは僕をボコボコにしましたよね?
覚えていますか?
本当はハナちゃんの方から告白してきたんですよ?
好きだと言うから付き合ってあげたんです。
どうしたんですか?そんな顔をして。これですか?
これはナタです。
けっこう重いですよ。
でも、これくらい重くないといけないんです。
一発で頭蓋骨を叩き割るには、これくらい重たくないといけないんですよ。
僕はこの村に帰ってきました。
ハナちゃんのお父さん、………さようなら。



この村には嫌な思い出しかない。



やあ、こんちには、村長さん!
お元気そうでなによりです。
覚えていますか?

僕です。


作 我那覇孝淳(C)  

Posted by koujun at 15:42Comments(0)小説

2011年09月07日

先読み将棋



棋士   「まさか、君とこんな事になるなんて」

女流棋士 「先生がお誘いになったんですよ」

棋士   「先生はやめたまえ」

女流棋士 「八段に昇格、おめでとうございます」

棋士   「ありがとう」

女流棋士 「あとは公式戦で250勝あげれば九段ですね。先生ならもう獲ったも同然です」

棋士   「将棋はそんなに単純なものじゃないよ。僕なんかまだまだ」

女流棋士 「そんな事ありません。この前の竜王戦、私、しびれちゃいました。まさか、山田八段の6四桂に対して、先生はかまわず4三桂成。その後、7六桂で銀を取られると先手不利になるのに、よく踏み込んでいきましたね」

棋士   「ははは。一見、無謀な手筋に見えるかもしれないが、僕は20手30手先を読んで、あの手を指したんだよ。僕に言わせれば、あの手しかなかった」

女流棋士 「さすが、先生…」

棋士   「先生は、やめたまえ」

女流棋士 「じゃあ、20手30手先を読んで、私をこんな所にお誘いになったんですか?」

棋士   「うーん。それがね。どうも酒が入ると、僕は手筋の読み誤りをするようだ。こんな所まで付き合ってもらってなんだが、今日はこのまま帰ろう。できれば、ここへ来たことも忘れて貰いたい」

女流棋士 「そんな!あんな攻撃的な攻めをする先生が、どうして急に弱腰になるんですか? 」

棋士   「しかし、私には妻も子もいる。第一、八段になったばかりで、ここが正念場なんだ。スキャンダルはまずい」

女流棋士 「一夜限りの契りでも、先生となら私は後悔はしません」

棋士   「そこまで覚悟して…」

女流棋士 「先生、お願い…。抱いて…」

棋士   「杉山クン………。ちょ、ちょっと待ってくれ。アレがアア来て、コレがコウ来る。すると、あの筋から…」

女流棋士 「先生?どうしました?」

棋士   「ああ!だめだ!24手目で、君の元彼のボクサーが出てきて、ボコボコにされる!」

女流棋士 「私にボクサーの元彼なんていません!」

棋士   「なに!居ないのか!だったら別の手で…アレをアアしたらコレがコウ来るだろ?そうすると…ああ!ダメだ!」

女流棋士 「どうしました?」

棋士   「32手目で君のお父さんが出てくる!」

女流棋士 「父は一昨年亡くなりました!」

棋士   「なに!亡くなったのか!だったら、コレがコウ来て、ソレをアアして…ああ!ダメだ!」

女流棋士 「どうしました!」

棋士   「43手目で、妊娠してしまう!」

女流棋士 「大丈夫です!コンドーム持ってます!1ダース!」

棋士   「よし!やろう!ええ乳しとるやないか!ええ乳しとるやないか!」

女流棋士 「ああああああ!」

棋士   「カウントしたまえ!残り時間をカウントしたまえ!」

女流棋士 「は、はい!10秒…1…2…3」

棋士   「うっっっ!」

女流棋士 「早っっっ!!!」



作 我那覇孝淳(C)

  

Posted by koujun at 09:40Comments(0)

2011年04月17日

レンジでチン


男  
えー。この度は御愁傷様でございます。私どもの方で手厚くお弔いさせて頂きます。

女  
(泣きながら)あ、有難う、ございます。ううう

男  
今日は故人と最後のお別れをなさって下さい。明日、ご遺体を引き取りに伺います。

女  
はい。有難う、ございます。うううう!

男  
大丈夫ですか?

女  
すみません

男  
それでは、申し訳ありませんが、明日の段取りをもう一度確認させて頂きます。

女  
はい。宜しく、お願いす。ううう

男  
では、明日は葬儀は執り行わず、火葬のみ、で宜しいですね?

女  
はい。本当はお葬式もやってあげたかったんですけど。ううう。

男  
いえいえ、最近は火葬のみの方も大勢いらっしゃいますよ。

女  
本当ですか?ううう

男  
はい。えー。火葬の前に、故人に別れの言葉を言って頂くのですが、その文章をある程度こちらで作成いたします

女  
別れの言葉ですか?

男  
はい。勿論、別れのお言葉ですから、お気持ちをそのままおっしゃっても結構です。ただ、ある程度、文章を作って置かないと、本番の時に感極まって、頭が真っ白になって何を言っていいのか分からなくなる方もいらっしゃるので

女  
ああ

男  
なので、少し故人の事を伺いますけど、宜しいですか?

女  
はい

男  
えーっと。先ずはお名前から

女  
デメちゃんです

男  
デメちゃん。と。何年のお付き合いでしたか?

女  
一八年です

男  
一八年!ほー。出目金にしては長生きしましたね。大切にお育てになったんですね

女  
はい!うううう

男  
何か、特技は有りませんでしたか?

女  
人間ポンプです

男  
人間ポンプ?

女  
はい、一度食べた餌を、私が手を叩いて合図すると、ポンって口から吐き出すんです。金魚がやるから金魚ポンプだって友達は言うんですけど、デメちゃんは、私の家族なので、やっぱり…やっぱり…人間ポンプなんですぅぅぅぅううううう

男  
大事になさっていたんですね。私どもペット葬儀社『極楽園』が責任を持って火葬させて頂きます。

女  
はい。ありが、とううううう

男  
では、火葬代金なんですが、消費税込で52,500円になります。

女  
え?52,500円?ちょっと高くないですか?

男  
え?

女  
うちのお祖父ちゃんが死んだ時の火葬代は145,750円だったのに!体重60キロで!デメちゃんは大体30gでしょ。30gで52,500円は高いでしょ、どう考えたって!何考えてるの!死んだじいちゃんが60キロでデメちゃんが30gだから、60000g割る事の30gでー、ちょっと電卓かして

男  
ちょちょちょ

女  
二千分の1!デメちゃんの体重はじいちゃんの体重の二千分の1!だからじいちゃんの火葬代145,750割る2000は!72.875!約73円じゃない!だったらデメちゃんの火葬代の相場は73円でしょ!!


男  
っていう客がいたんだよ。

男2 
ひっでーな。で、どうしたの?

男  
仕方が無いから73円貰って、レンジでチンしたよ

男2 
うわぁぁ


作・我那覇孝淳(C)  

Posted by koujun at 11:04Comments(0)コント

2011年03月21日

不幸の星

サチエ 
「人は皆、生まれた瞬間から宿命と言う名のリュックを背負っている。
そのリュックの中には星のかけらが入っているのだ。
貧乏の星。金持ちの星。心配症の星。冒険家の星。ワキガの星。美形なのに何故か異性にモテない星。ウンコみたいな顔のくせに何故かモテモテの星。付き合う男、付き合う男全てが何故か無職になるニートの星。付き合う女、付き合う女全てが何故か万引きをする節約家の星…。
そういう星の元に人は生まれてくる。
私の親友、アミが背負っている宿命と言う名のリュックの中には、『付き合う男は皆、死んでしまう』と言う恐ろしい星が入っている。


アミ  
「もう、嫌になっちゃう…。なんで、私だけいつも、こうなんだろ。もう、誰も愛せないよ」


サチエ 
「大丈夫?あんまり気を落とさないで。もう飲まない方がいいよ」


アミ  
「も~。飲ませてよ~」


サチエ 
「やめなって!いつか良い男が現れるって」


アミ  
「無理だよそんなの!ヨシアキは交通事故で死んじゃうし、カズトヨは自殺しちゃったし、シノブはバンジージャンプで死んじゃったし!
もう、怖くて恋なんて出来ないよ!私は付き合う男を殺してしまう、そんな不幸な星の元に生まれたんだよ!私は一生この運命から逃れられないの!」


サチエ 
「馬鹿!そんな事、あるわけないでしょ!運命は変えられるんだよ!」


アミ  
「だって、だって」


サチエ 
「大丈夫だって。だったらさ、何があっても死なない星の元に生まれた男と付き合えばいいでしょ?」


アミ  
「そんな人なんて居るわけないじゃない」


サチエ 
「それが居るんだなぁ。登山家で何ども死にかけたけど、必ず生きて帰ってくる男が」


アミ  
「ホント!紹介して!」


サチエ 
「アミは『付き合う男は皆、死んでしまう』星の元に生まれた女だけど、私は何故か『付き合う男が皆、暴力を振るう』DVの星の元に生まれた女なのだ。
今付き合っている男は今までの男の中でも最悪で、木刀で私の腹を思い切りスイングする。
顔や手足は痣が見えてDVがバレるから、腹や背中を狙うと言う、ズル賢い男。
私以外にも女を作っている身勝手な男。
登山家だけあって、力も凄い。
別れを切り出せば切り出すほど、暴力も酷くなる。
いつか私はこの男に殺されてしまうだろう。殺される前に殺さないと…」


アミ  
「へぇ。登山家かぁ、ねぇ、どんな人?」


サチエ 
「ん~とね、野性的な人。会ってみる?」




作・我那覇孝淳(c)   

Posted by koujun at 17:25Comments(0)

2011年03月11日

夜間タクシー


男  私はフリーライター。全国各地を回って面白い話しをかき集めている。
   面白い話と言っても笑える話しだけではない。
   勿論、笑える話もそうだが、悲しい話だって面白いし、痛い話だって面白い。
   ハッピーな話も面白いし、アンハッピーな話はもっと面白い。
   そして、身の毛もよだつ恐怖の話も、面白い。
   そういった、人が聞きたがる面白い話を集めて本にする。
   それが私の仕事だ。
   もともと、他人と喋る事が苦手でフリーライターという仕事を選んだ。
   しかし、フリーライターと言う仕事は、実際には書くことよりも、人と話す事の方が多い。
   話を聞き出す話術が書く技術よりも要求されるのだ。
   いつしか私は話術が巧みになり、その人を見るだけで、
   どんな話が聞き出せるか、直感でわかるようになった。

   その日は、ある雑誌の打ち合わせを夜遅くまでしたため、タクシーに乗って帰宅した。 


女  「どこまで行きますか?」


男  タクシー運転手は女性ドライバーだった。今では珍しくは無いが頻繁にお目にかかるものでも無い。
   私は手短に行き場所を告げて後部座席から彼女を観察した。
   そしてその様子から、何となく恐怖体験を聞き出せるような、そんな気がした。
   そこで、私は気さくに話を切り出した。

   「この前、タクシーの運転手さんから聞いたんですけどね」


女  「はい」


男  「その人、スーツを着た、一見してその筋の人とわかる男を乗せたそうなんです」


女  「その筋?」 


男  「ええ。つまりヤクザです」


女  「ああ」


男  「でそのヤクザ、後部座席で何やらカチャカチャやってるんですよ。
    それで、ミラー越しに後部座席を覗いたらピストルのメンテナンスをしてたらしいんです」


女  「へー」


男  「その男、ニヤリと笑って『誰にも言うなよ』って言ったらしいんです。
    そんな事ってあるんですねぇ」

   怖い話を聞き出したいのなら、こっちから怖い話を一つ提供する。
   うまく行けばその小ネタに食らいついて、その小ネタよりも面白い話を聞かせてくれる。


女  「怖いですねぇ」


男  「運転手さんもこういう怖い体験ってあります?」


女  「そういう身の危険を感じるような体験はないですけど、人を殺した事ならありますよ~。
    ついさっきもこの車を運転していた人を殺してトランクに押し込んだんです。
    どこに捨てようかな~って、場所を探してるんですけどね~。いい所ありませんか?」


男  「またまた~面白いねぇ~」

   と言いながら、私は運転手のネーム・プレートを見た。
   そこには太った中年の男の顔写真が微笑んでいた。  





作・我那覇孝淳(C)  

Posted by koujun at 08:19Comments(0)

2011年01月26日

やらしい言葉

猿顔男 「言葉って、不思議だよね」

豚面男 「なに、いきなり」

猿顔男 「普通の言葉なのに角度を変えると急にいやらしくなる言葉ってあるよね~」

河童男 「ほう。たとえば?」

猿顔男 「≪いやらしく≫ほとばしる」

河童男 「いやらしーーー!!」

豚面男 「何が?何がいやらしいの?『ほとばしる』の何がいやらしいの?」

猿顔男 「え?」
 
河童男 「いやいや。『ほとばしる』だよ?いやらしいだろが!」

豚面男 「何処が?」

猿顔男 「マジか?お前マジか?」

河童男 「これだから教養の無いヤツは困るんだよなぁぁ。あのな、よく聞けよ、、沖縄県那覇市古波蔵3丁目23−1にある漫湖と同じ名称でお馴染みの女性のアソコの部分は昔の言葉で『ほと』っていうんだよ。ほれを踏まえてもう一度聞けよ、師匠!お願いします」

猿顔男 「ほとばしる」
 
河童男 「いやらしー!!」

猿顔男 「まだあるよ、いやらしい言葉」

河童男 「聞かせて、聞かせて!」

猿顔男 「『あまんじる』」

河童男 「いやらしいー!じゃあ、これは、これは『ぬきんでる』」

猿顔男 「いやらしーー!」

豚面男 「ハイハイハイ!これは!?『かたくなる』」

猿・河童「んーーー」

猿顔男 「それは、ちょっとちがうな。ストレートだな」

豚面男 「じゃあ『ぬれている』」

河童男 「それもちがう」

豚面男 「『たっている』」

河童男 「ちがう」

豚面男 「なんだよ!わかんねーよ!何が違うんだよ!」

河童男 「『ほとばしる』も『あまんじる』も『ぬきんでる』もエロスの詫び寂びがあるんだよ。わかんねーかなぁ」
 
豚面男 「なんだよ!エロスの詫び寂びって!!」

猿顔男 「おし!じゃあ俺が『ほとばしる』と『あまんじる』と『ぬきんでる』を使った文章でエロスの詫び寂びを教えたる」

河童男 「お願いします!師匠!お前もお願いしないかい!」

豚面男 「お、お願いします」

猿顔男 「では、行きます。…アキコの細い指先が、己のつぼみを優しくつまみ上げた時、その濡れた花弁から糸を引くように『あまんじる』がしたたり落ち、秘密の割れ目を『ほとばしる』。その様子をフスマの隙間から覗き見ていたヨシオの未熟な肉棒は痛いほどにそびえ立ち、その先端から雄のエキスが『ぬきんでる』」

豚・河童 「いやらしぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

  

Posted by koujun at 22:43Comments(0)コント

2010年12月22日

木瓜の花が咲く頃に


爺   「長男の嫁の美代子さんは、私の事をボケ老人だと思っている節がある。私ももう79歳だ。たしかに時々、物忘れをする時もある。だからと言ってボケ老人扱いをするのは如何なものか。美代子さんは働き者で、実に良い嫁だ。13年前に夫が事故死して以来、この家に留まって私の面倒をみてくれている。それには感謝している。だが、ちょっとした物忘れでも、ボケ老人を見るような目付きで私を見る。アレが気に食わない。だから本当にボケたふりをして、美代子さんを困らせてやろう。と、今朝思いついた。………美代子さん!美代子さん!」

嫁   「はいはい。なんですか?おじいちゃん」

爺   「美代子さん。朝ご飯はまだかな。腹が減って腹がへってしょうがないんだが」

嫁   「あら!おじいちゃん、ごめんなさい。まだでした?ごめんなさい。今すぐ準備しますから」

爺   「え?いや、あの、美代子さん」

嫁   「すぐ出来ますから」

爺   「う~ん。そう来たか。私は今朝、ちゃんとご飯を食べた。本当に私がボケたと思っているのか。だんだん腹が立ってきた」

嫁   「出来ましたよ、おじいちゃん。はい、朝ご飯」

爺   「ん?何だこれは?私は今朝、食べたよ」

嫁   「え?召し上がりました?ごめんなさい。てっきりまだかと思っちゃた。すみません。片付けます」

爺   「今の目だ!あの目は私の事をボケ老人だと思っている!実に腹がたつ!美代子さん!!」

嫁   「はいはい」  

爺   「朝ご飯がまだ何だが!」

嫁   「あら!おじいちゃん、ごめんなさい。まだでした?ごめんなさい。今すぐ準備しますから」

爺   「おい!美代子さん」

嫁   「はい」

爺   「私を馬鹿にしているのか?」

嫁   「はい?」

爺   「今朝、私は朝ご飯を食べたぞ!」

嫁   「え?食べました?すみません。………ところで、どちら様ですか?」

爺   「ん?」

嫁   「貴方は、誰ですか?」

爺   「み、美代子さん?」

嫁   「すみません。おじいちゃんのお友達ですか?」

爺   「と、いう事なんですよ、先生。美代子さんは、一体どうなってしまったんですか?」

医者  「ん~若年性アルツハイマーかな~」

爺   「若年性アルツハイマー?という事は、美代子さんはボケてしまったんですか?」

医者  「いや、ちゃんと診断しないとわからないから、今度病院に連れてきてくれるかな?」

爺   「…解りました。じゃ、失礼します。なんて事だ…。美代子さんが………」

看護婦 「お大事に~。…先生」

医者  「ん?」

看護婦 「大変ですね、あのおじいちゃん。自分よりも年下の痴呆症の介護をしないといけないなんて。介護問題もここまでくると、なんか切ないですね」

医者  「あのおじいちゃんね」

看護婦 「はい」

医者  「一人暮らしなんだよ。来年の2月ごろ、施設に行く予定なんだ」

看護婦 「…そうですか。木瓜の花が咲く頃ですね………」



作・我那覇孝淳(C)  

Posted by koujun at 08:01Comments(0)ラジオ・ドラマ

2010年12月17日

恐怖のフライト           

WATR航空864便にご搭乗の皆様、有難う御座います。
機長でございます。
当機は羽田発シンガポール行き、飛行時間は6時間35分の予定でございますが、えー…急遽、到着地を変更いたします。
皆様には大変、ご迷惑をおかけ致します。

えー、新しい到着場所を申し上げる前に、私の話を少しお聞きください。
えー…。
あ、当機は安定した気流に乗りましたので、シートベルトをお外しください。
シートベルトをお外し下さい。

えー、実は…私、今朝、思うところが有りまして、妻を刺し殺して参りました……。
えー…半年ほど前に、長年連れ添った妻と…えー…離婚を…離婚を致しました。
妻とは、結婚をして15年になります。
えー…私は妻を愛していましたし、妻もまた、私の事を愛していると信じておりました。
えー…、離婚は妻の方からの申し出で御座いました。
青天の霹靂とはこの事で御座います。
理由を問いただした所、他に男が出来たと…出来たと、いう事で、して。
その男と一緒になりたいという申し出で御座いました。
その言葉を残して妻が出て行ったのが半年前の事で御座います。
この半年間、私はなんとか妻との仲を修復しようと試みたのですが、駄目でした。
妻の意志はかたく、浮気をしたその男と、年が明けて結婚すると申しておりました。

その間男は、海外で宝石の買い付けをしているバイヤーで御座います。
その男が二十歳そこそこの若い燕なら納得はしないが理解はできます。
が!そいつは私と年も変わらない中年なのでございます。
何故、妻は私よりも、そんな男を選んだのか…。

私は妻の、妻の浮気の、浮気の相手が皆様がご搭乗のこの864便に乗るという事を知ってしまいました。
そして、偶然にも私がフライトを担当するという事も。
そのような理由で私は、妻を殺し、あの男を殺し、自ら命を絶とうと決心致した次第で御座います。

座席番号A023にお座りの大河内春男様、大河内春男様。
私は、旧姓、二ノ宮小枝の元夫、二ノ宮吉信で御座います。
副機長の田中操縦士は皆様より先に旅立ちました。


それでは、新しい到着地をお知らせ致します。
当機はこれより、天国、ないし地獄へ向かいます。
天国、ないし地獄へ向かいます。
WATR航空864便にご搭乗の皆様、人生最後の快適な空の旅をお楽しみ下さい。


機長でした。



 作・我那覇孝淳(C)  

Posted by koujun at 19:46Comments(0)ラジオ・ドラマ

2010年12月01日

『戦場カメラマン・ワタナベ!』 

渡辺 「(早口気味で)それで、今年の9月にアフガニスタンに取材に行ったんですよ。僕が現地に到着すると、もう既に米軍とタリバーンがドンパチやってるんですね。そこで、一番衝撃を受けたのは、タリバーンがアフガニスタンで造られた学校を破壊していると言う事なんです」

女性D「学校を?」

渡辺 「はい。アフガニスタンはイスラム教の世界ですから、伝統的に女の人が学んではいけないという考えがあるんです。それで、女性が知的な教育が出来ない様に学校を破壊しているんです」

女性D「酷いですね。渡辺さんて、実際に会うとテレビで見る時と印象が違いますね」

渡辺 「そうですか?」

女性D「はい。けっこう早口なので。テレビで拝見する時はもっと落ち着いていると言うか」

渡辺 「テレビではゆっくり喋るからですよ。アレはキャラですよ。キャラ」

女性D「やっぱりそうなんですか」

渡辺 「そうですよ。あんなにゆっくり喋ってたら、戦場では生きては行きませんよ。でも、僕はこういう形で皆さんが注目して下さる事に本当に有り難く思ってます。だって、そのお陰で日本人に世界の戦場をリアルを伝える事ができますから。僕がこういう風に有名になったのは、使命だと思っています」

AD 「スタンバイ、オッケーでーす」

女性D「あ、準備出来たみたいですね。それじゃ、渡辺さん、始めましょうか。今日はですね、沖縄のラジオ番組『わったーラジオ』のMCこきざみインディアンに渡辺さんから応援メッセージを送って頂たいんですよ。原稿はこちらで用意したので、これを読んで下さい」

渡辺 「これを読めばいいんですね」

女性D「はい。じゃ、早速行きましょうか。本番!3,2,1!」

渡辺 「わったー……ラジオを……お聞きの……皆さん……こんばんは。戦場……カメラマンの……渡辺、」

女性D「すみません、すいません」

渡辺 「はいはいはい?」

女性D「もう少し早く喋ってもらえますか?ちょっと、尺が足りないので」

渡辺 「あ、もうちょっと早く?はい。わかりました」

女性D「本番!3,2,1!」

渡辺 「わったー…ラジオを…お聞きの……皆さん……こんばんは。戦場……カメラマンの……渡辺」

女性D「すみません!渡辺さん。全然変わってないので、もうちょっと早く」

渡辺 「もっと早く、ですか?」

女性D「はい。時間がちょっと足りないので、早口でお願いします」

渡辺 「いや、早口でって言ったって、僕にはキャラがあるし」

女性D「それ!それくらいの早口で行きましょう。3,2,1、ハイ!」

渡辺 「わったーラジオをお聞きの皆さんこんばんは。戦場カメラマンの渡辺、イヤイヤイヤ。これはちょっと。誰だかわかんないよ、これじゃあ、偽物だと思われちゃうよ。世間はスローな渡辺を求めているんだから、これじゃあ、偽物だと思われちゃうよ!」

女性D「…わかりました。じゃあ、こっちで何とかしますので、好きなようにやって下さい」

渡辺 「なんかすみませんね。我儘言っちゃって」

女性D「3,2,1」

渡辺 「わったー………ラジオを……お聞きの……皆さん………こんばんは。戦場……カメラマンの……渡辺…………陽三郎です」

女性D「にせもの!」


  

Posted by koujun at 07:39Comments(0)ラジオ・ドラマ

2010年11月06日

『風邪なんです』

客  「あの~、すいません」

店員 「いらっしゃいませ。薬なら何でも揃う、ドラッグ・ストア『オカモトツヨシ』にようこそ。何でも揃うと言っても、合法的な範囲で、ですけどね~」

客  「風邪薬って、どこに有りますか?」

店員 「風邪薬ですか?え~と、この棚が風邪薬のコーナーになりますね。熱はありますか?」

客  「ちょっと、微熱が」

店員 「そうですか。では、これなんかどうですか?即効性が有りますけど」

客  「へぇ~。あ、コレは、どんなヤツですか?」

店員 「こちらは、喉の痛みを和らげる薬です」

客  「コレは?」

店員 「こちらは、頭痛薬です」

客  「コレは?」

店員 「これは喉の薬ですね」

客  「コレは?」

店員 「解熱と痛み止です」

客  「コレは?」

店員 「関節痛の薬です」

客  「コレは?」

店員 「滋養強壮剤です」

客  「コレは?」

店員 「鼻炎の薬です」

客  「コレは?」

店員 「これも頭痛薬」

客  「コレは?」

店員 「咳止めです」

客  「コレは?」

店員 「頭痛薬です」

客  「コレは?」

店員 「解熱剤」

客  「コレは?」

店員 「咳止め」

客  「コレは」

店員 「解熱剤」

客  「コレは?」

店員 「咳止め」

客  「コレは」

店員 「解熱剤」

客  「コレは?」

店員 「咳止め」

客  「コレは」

店員 「バイアグラです」

客  「あ、これがバイアグラなんだ。へぇ~。そうか。ふ~ん……そっかそっか…。コレにしようかな…」

店員 「あの、風邪なんですよね?バイアグラは風邪には効きませんよ」

客  「ですよね。あ、すいません。風邪のマスク有ります?ついでに買っておこうかな」

店員 「はい、マスクはここの棚になります」

客  「うわぁ。いろんなマスクが有るんですね。コレは、どんなヤツですか?」

店員 「こちらは二重構造になってまして、二段階でウイルスをシャット・アウトできます」

客  「へぇ~。コレは?」

店員 「こちらは、工業用の粉塵マスクですね。通気性は抜群です」

客  「へぇ~。やっぱり通気性は良いほうがいいなぁ。コレは?」

店員 「コンドームです」

客  「え?これ、コンドーム!へぇ…最近はパッケージがお洒落ですね…。ふ~ん。そうか。ふ~ん……そっかそっか…。コレにしようかな…通気性が良さそうだし………」

店員 「良くないですよ、通気性は。コンドームですから。風邪なんですよね?」

客  「ごほごほ。そうなんですよ。やばい、だんだん気分が悪くなってきた。すみません、さっきの解熱剤と二重構造のマスクを買って帰ります。それと、この電動歯ブラシもお願いします」

店員 「それは、ピンク・ローターですよ」

客  「へぇぇ~。これがピンク・ローター!へぇ~、これが…、初めて見た…。いててて…、頭がドンドン痛くなって、なんだか、朦朧としてきましたね~~。コレ、朦朧としてきましたね~…いつつつつ…。もう、何が何だかわかんなくなってきちゃった…」

店員 「大丈夫ですか?」

客  「すみません。じゃあ、この風邪薬と予防マスクと電動歯ブラシ買って帰ります」

店員 「バイアグラとコンドームとピンク・ローターですね。1万4千5百円になります」

客  「ああ~わけわかんないなぁ。頭いたいなぁ。はい、二万円。おつりはいいです。ああ、頭いたいなぁぁぁぁぁ~~」

店員 「有難う御座いました!」
  

Posted by koujun at 00:00Comments(0)ラジオ・ドラマ

2010年10月30日

『考える葦』 


「人間は考える葦である」と言ったのはパスカルだが、私に言わせれば、ん?パステルではない!パスカルだ。
パスカルも知らないのか。
君はこの仕事を軽んじているのか?
一人前になりたければ勉強をしなさい。

どこまで話した?
そうそう「人間は考える葦である」だ。
だが私に言わせれば多くの人間は「考えない葦」なのだよ。
いいか、我々詐欺師の最初の仕事はこの「考えない葦」を探す事なのだ。
その足じゃない!葦と言うのはイネ科の植物のことで…まぁいい。
教養の無い者に時間を割くほど、私は暇では無い。

どこまで話した?
そうそう、我々詐欺師が初めに取り掛かる仕事は「考えない葦」を探す事だ。
人間は当たり前の事については意味を考えず、分析もせず、無意識の内に行動している。
白衣の医者が腹を見せろ、と言えば何の疑いも持たずに、腹をさらけ出すし、トイレに清掃中の看板が立っていれば、疑問も持たずに中には入らない。
当たり前の事は考えない。
日常生活で人間は「考えない葦」として生活しているのだ。

だが、我々詐欺師は違う。
常に時代を読み、考え続けている。
「考える葦」たる我々が「考えない葦」共の金品を貰い受けるのは当然の事なのだ。

オレオレ詐欺を世界で一番最初にやったのは、この私だ。
ネズミ講を最初にやったのも、勿論私だ。
だが私は一度も捕まった事はない。
何故だか解るかね?
それは誰も思いつかなった事を世界で最初にやったからだ。
誰も思い付かないのだから防ぎようが無い。
そして世間が警戒し始めたら、さっさと身を引く。
捕まるのは、いつも後から真似した詐欺師ばかりだ。
私に言わせればこいつらも「考えない葦」なのさ。

私も、もう年で詐欺の世界から引退したのだが、この通り頭ははっきりしていてね。
次から次へと詐欺の手口を思い付くんだよ。
つい先日もツイッターと電子マネーを使った画期的な詐欺を思い付いてね。
この手口は防ぎようが無い。
何故ならばまだ誰も警戒していないからね。
今なら幾らでも儲ける事が出来る。

ん?ああ、幾らでもだ!ほほう、やってはみたいのかね?
ほぉう「考える葦」になりたいのか?
なにせ、ツイッターを使った詐欺だ。
ターゲットは全世界に及ぶ。
まだ、世界中で誰もやった事の無い手口だからね。
死ぬほど儲ける事ができる。

…まぁ、二百万あれば手口を教えてやらんでも無いが。

準備出来るかね?



作・我那覇孝淳(C)



  

Posted by koujun at 22:33Comments(0)小説

2010年10月27日

恐怖のサークル 



ラ王 「あの、ナナミンさんですか?」

ナナ 「はい。あなたは?」

ラ王 「僕は平成ラ王です」

ナナ 「あ、平成ラ王さんですか?初めまして、ナナミンです」

ラ王 「初めまして、他のみんなは、まだ…」

ナナ 「まだ来てないんですよ」

ラ王 「そうですか。もう時間なのに」

ナナ 「今日は、何処でキャンプなんですか?」

ラ王 「え?場所、聞いてない?」

ナナ 「はい」

ラ王 「そう…ですか。ま、着いてからのお楽しみって事で」

ナナ 「はぁ…。私、初めてなんですよ。ソーシャル、えーと、ソーシャル」

ラ王 「ソーシャル・ネットワーク・サービスMAXI」

ナナ 「そうそう、ソレ。周りの友達はみんなMAXIやってて、面白いからって勧められた
んですけど、」

ラ王 「へー。どうして、うちのサークルに?」

ナナ 「『ドキドキする事を探すサークル』って書かれてたから」

ラ王 「OFF会を目的にしたサークルって沢山あるけど、ウチらは『ドキドキする事』がメ
インのサークルだからね」

ナナ 「OFF会って?」

ラ王 「え?OFF会知らないの?」

ナナ 「すみません」

ラ王 「いえいえ、何ていうかな、ネットで知り合った者たちで、実際に有って、遊んだり
するっていう、まぁ、そんな集まりです」

ナナ 「そうですか。よくやるんですか?OFF会って」

ラ王 「いや、今日は久しぶりのOFF会だよ。ナナミンさんが入会したんでね。一年ぶりじゃないかな、新しいメンバーが増えたのは。だからね、今日はナナミンさんの親睦会も兼ねてるんだよ」

ナナ 「でも、OFF会って、知らない人同士が会うんですよね?危なくないですか?ほら、最近」

ラ王 「ん?最近?ああ、最近起こったバラバラ殺人事件の事?」

ナナ 「はい。あれも、ネットで知り合った者同士がどうのこうのってニュースで」

ラ王 「まぁ、そういう危険性も否定出来ないけどね。って、ナナミンさんも、参加してるし(笑)」

ナナ 「管理人が女性だったんで。それに、ドキドキするのが好きなんですよ」

ラ王 「もし、僕がその犯人だったらどうする?まだ捕まってないみたいだし」

ナナ 「え?もー、よしてくださいよ~(笑)何処でキャンプするんだろう。楽しみだなぁ」

 森のSE
 一時間後。

ラ王 「おかしいなぁ…。集合時間一時間も過ぎてるのに誰も来ない」

ナナ 「こういう事って良くあるんですか?」

ラ王 「いいえ、無いですよ、こんな非常識な事…。もう僕、帰ります」

ナナ 「え?」

ラ王 「信じられないな。ちゃんと時間は守ってもらわないと。もう、僕は行きません。どうします?ナナミンさんはまだ待ちます?」

ナナ 「どうしようかな」

ラ王 「僕、車で来たんで、なんなら送りますけど」

ナナ 「そう、ですね。中止になったんなら中止になったって連絡くらいしてもいいのに。送っていってもらえますか?」

ラ王 「いいですよ」


 車の発進音。
 車内。

ナナ 「すみません、わざわざ」

ラ王 「……いえ」

ナナ 「『ドキドキ・サークル』のメンバーって、こんなに時間にルーズなんですか?」

ラ王 「………」

ナナ 「平成ラ王さん?」

ラ王 「………」

ナナ 「『ドキドキ・サークル』ってそのまんまの名前ですね。みんなでドキドキする事をやろーって、いう…。あの、平成ラ王さん?」

ラ王 「………」

ナナ 「で、でも、残念だったなぁ。また有りますかね、OFF会…」

ラ王 「どうですかね…」

ナナ 「アノ…、平成ラ王さん?」

ラ王 「何?」

ナナ 「何処に向ってるんですか?」

ラ王 「何処って山の中だよ」

ナナ 「え?」

ラ王 「馬鹿な女だな。簡単にネットで知り合ったやつにホイホイ会うからこうなるんだよ」

ナナ 「平成ラ王さん?どうしたんですか?」

ラ王 「最近バラバラ殺人事件が起こってるって、さっき話したよね」

ナナ 「なに言ってるの?」

ラ王 「で、もし、犯人が俺だったらどうする?って聞いたよね?」

ナナ 「…あなたが?バラバラ殺人の」

ラ王 「どこからバラしちゃおうかな~」

ナナ 「止まりなさい…」

ラ王 「怖い?いひひひひ。怖い?いひひひひ」

ナナ 「早く、止まりなさい…」

ラ王 「いひひひひひひひひひひひ」

ナナ 「止まりなさい!私はナニガシ県警刑事課、日暮七海23歳!!とうとう見つけたわバラバラ殺人犯!早く止めないと、右のコメカミから左のコメカミをニューナンブの弾丸が貫通するわよ!」

ラ王 「え?」

ナナ 「嘘だと思ってんの!(ピストルを出す)ほら!」

ラ王 「えええええええ!!嘘嘘嘘!これ、嘘!!」

ナナ 「嘘って何よ!!」

ラ王 「これ、『ドキドキ・サークル』の企画っていうか、イベントっていうか!」

ナナ 「はぁ?」

ラ王 「新しく入ってきたメンバーに、ドッキリを仕掛けてたの!これドッキリ!」

ナナ 「嘘ぶっこいてんじゃねーよ!」

ラ王 「嘘ぶっこいてないよ~~!」

 夜虫の音
 キャンプ場。

管理人「平成ラ王さん、うまく行ってるかしら」

男  「でも、悪趣味なおもてなしだよね、怒んないかな、ナナミンさん」

管理人「 フフフフ。さ、平成ラ王さんとナナミンさんが来るまでに準備をすませましょ。久しぶりのOFF会だから今日は盛り上げるぞー!!」


                    作・我那覇孝淳(C)  

Posted by koujun at 23:41Comments(0)ラジオ・ドラマ

2010年10月24日

ハチノス

男1  「うわぁ。先輩…」

男2  「どうした」

男1  「これは、また…」

男2  「びびってんのか」

男1  「いえ、びびってるっていうか、でっかいですね~。写メ撮っていいスか?」

男2  「駆除してからな」

男1  「それにしても、でかいですね」

男2  「うん。おれも、ココまでデカイ、スズメ蜂の巣は見たことない」

男1  「入りますかね、収納ボックスに。割って入れますか?」

男2  「いや、たしか四号サイズのボックスが有った筈だから、それに収納しよう。ここまで立派だと壊
すのは勿体ない。綺麗に洗浄して、オフィスに飾ろう。社長、喜ぶぞ」

男1  「そうスね。いやぁぁ、ほんとにデカイすね。30キロは有るんじゃないですか?」

男2  「俺も害虫駆除の仕事をして長いけど、ここまでデカイ、スズメ蜂の巣は初めてだな」

男1  「しかし、こんなにデカイと、気持ち悪いですね」

男2  「脳味噌みたいだな」

男1  「え?」

男2  「いびつな球体に、この波打った模様。なんか、脳味噌みたいじゃないか?蜂の巣って」

男1  「ん~。言われてみれば、そんな感じはしますけど」

男2  「俺、前々から思ってたんだよな~。スズメバチの巣って脳味噌みたいだって」

男1  「変なこと考えますね」

男2  「おし、この馬鹿デカイ蜂の巣をボックスに入れて、次の現場に行こう。壊さないように入れろ
よ」

男1  「はい」


蜂の巣 「…驚いたな。まさか感づいてしまう地球人がいようとは。女王蜂が蜂達を支配していると地球人たちは思っているが、実は違う。蜂達を支配しているのは、我々、ハチノスなのだ。女王蜂は兵士達を製造する工場にすぎない。我々はこの美しい星、地球を支配する為にやってきた。この星の原住民の言葉を借りれば、エイリアンだ。なぜ、我々が支配に踏み切ったのか?それは、この星、地球が望んだからだ。人類は地球を破滅に導いている。もう、人類に地球を支配させるわけにはいかない。まず、我々は手始めに社会性と序列が整っている生物、蜂を支配した。蜂のDNAに入り込み、世界中の蜂を殲滅し、生態を乗っ取った。そして、蜂の巣に身体を変えて、蜂達をコントロールしているのだ。つまり、蜂の巣の形をした我々は、蜂達の司令塔、脳味噌といってもいい。今、全世界にいる蜂は全て、我々べッチョ・ベロンチョ・ベロマッチョ・パパポイ・ポポイ・ポポマッチョ星人なのだ。我々べッチョ・ベロンチョ・ベロマッチョ・パパポイ・ポポイ・ポポマッチョ星人は蜂の巣に姿を変えてこの地球を、うげ!!」


男1  「あ!!」

男2  「どうした」

男1  「すみません。蜂の巣、われちゃいました」

男2  「も~。気をつけろって言ったのに!」




                        作 我那覇孝淳(C)

  

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