2017年10月06日

心の体操




『心の体操』完読。
岡本浩一著。

多湖輝先生の名著、『頭の体操』の心バージョン。
人間の心理をクイズ形式で出題しています。

いわゆる心理クイズではなくて、ポップ心理学をクイズにしたものです。

たとえば
【性の先進国アメリカには、レズビアン専用のヌーディストビーチがある。ふつうレズビアンのカップルは、男性役と女性役があるが、このビーチに来ると、一目でどちらが女性役かがわかるという。なぜだろう】

答え::男性役は全裸でも女性役はなにか着用している場合が多い。なので何か身につけている女性がネコ。

{心のしくみ::人間は幼い頃から、玩具、色、服装、髪の長さなど、男女をわける認識になれている(ジェンダー・シェマ)。海では男性が着衣が少なく女性は着衣が多いというのも、そういった認識のひとつ}


たとえば
【赤ちゃんが鏡に映った自分の姿をみて自己を認識できるのは生後21ヵ月過ぎといわれる。では、赤ちゃんが本当に自分のことが分かっているかどうか調べるには、どうすればよいだろう。】

答え::眠っている赤ちゃんの鼻のアタマに、そっとイタズラ書きをしておいて、目が覚めてから鏡を見せる。

{心のしくみ::鏡をみた赤ちゃんが自分の顔をキチンと認識し、鏡に映った鼻の位置と実際の鼻の位置の空間認識が出来ていれば、自然に手を鼻のころこにやる}

たとえば
【酔っ払ったサラリーマンが大暴れしていたので警察に連行された。保護されても始めのうちは暴れていたが、警察がある事をしたとたんに大人しくなった。なにをしたのだろう】

答え::住所と名前を聞かれ、こたえた。

{心のしくみ::人間は自分の名前が知られてないと攻撃性が高くなり羞恥心が低くなる。これを《匿名性の効果》という}

といった問題が全68問。
ゲーム感覚で心理学を学びましょう。
というのが本書の趣旨。

狭い部屋でそだった子供と広い部屋でそだった子供は、歩きだす時期も異なる。
狭い部屋でそだった子供の方が歩きだすのが早い。
理由は簡単で掴まり歩きがしやすく、いつでも歩行訓練ができるから。

ただし、乳児期に充分ハイハイ運動をしなかった子供に発達障害の確立が高いという報告もある。

新米パパの洋一は、そんな情報を仕入れるとすぐに作業にとりかかった。
室内の一角、八畳間の家具をすべて別の部屋に移して、14.5平方メートルの〝ハイハイ広場〟を作ったのだ。
生まれて15ヵ月の我が子のために。

新米ママの明世は、居間が狭くなったとブウたれている。
けど、元ヤンで暴走族スキッドマークの頭を張っていた洋一の我が子への溺愛ぶりに嬉しく思っている。

そんな洋一が、眠っている我が子の鼻のアタマに赤い水性ペンで可愛らしいドクロマークを描いている。
「なにしてんのよ」
「コイツが自分のコトわかるか確かめてんだよ」
当然、明世には、なんの事かわからない。
説明が不足し過ぎている。
でも、あまり深くつっこんで聞くと説明下手の洋一は怒ってしまうので明世は聞かない。
「そ。あまり変なことしないでよ」
それだけ言うと明世はキッチンへ向かった。

15分後、目を覚ました赤ちゃんに洋一はさっそく鏡を見せた。
しばらく鏡をみていた赤ちゃんは、父親譲りの眼つきの悪さで洋一を睨んだ。
赤ちゃんはジッと洋一を睨んでいる。
「なんだよ」
思わず洋一も赤ちゃんを睨む。

赤ちゃんは洋一を睨みながら口を小さくすぼめ、次に大きく開け、続いて横に平たく広げ、最後にもう一度おおきく開ける。
その口の動きを繰り返している。
さらに小さな右手を挙げて、プルプル震えながら小さな指で洋一の顔を指す。
「なんだ?なにか言ってるのか?」
洋一は眼つきの悪い我が子のことを、ちょっと気味悪いなぁと思いつつ、口の動きに注目する。

小さくすぼめて、大きく開けて、横に広げて、大きく開けて。
小さくすぼめて、大きく開けて、横に広げて、大きく開けて。
…………………お、………………ま、……………え、………………か。

お……ま……え……か……お……ま……え……か……お……ま……え……か。

おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。
おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。
おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。おまえか。

いつまでも、いつまでも、赤ちゃんは口の動きを繰り返す。
洋一は自分の親指で赤ちゃんの鼻のアタマを拭った。
拭って赤い水性ペンで描かれたドクロマークを消した。


途端に赤ちゃんは、キャッキャッと可愛らしく笑った。



このとこは明世には黙っておこう。
洋一はそう思った。




Posted by koujun at 16:21